3月7日、横浜アリーナ。RADWIMPSのホームグラウンドでもある横浜で『Human Bloon Tour 2017』が行われた。2016年は映画『君の名は。』の劇伴や地上波での初演奏、アルバム『人間開花』のリリース、年末には紅白歌合戦出場も果たすという"事件"が断続的に展開されたRADWIMPSにとってもファンにとっても怒涛の1年であった。そんな『人間開花』の総括でもあり延長線でもある今回の『Human Bloom Tour 2017』はこれまでのライブとは全く違う次元で爆発した奇跡のようなライブだった。

会場の照明が暗転するとシンセサイザーの音色にノイズを走らせたような美しいSEが流れ、その音は会場の熱気を受けて打ち込みのビートを刻んでいく。盛大な手拍子が巻き起こる中で1曲目の"Lights go out"が始まる。ステージを隠すようにスクリーンが前方に下りていて、前方からはメンバーの姿を確認する事はできない。(ただ筆者の指定席からスクリーン裏は丸見えであった)スクリーンには野田洋次郎(Vo.Gt.Key)の美しい歌声とメロディに合わせ眩い光が泡沫のように現れては消えていく。間髪入れずに2曲目は"夢灯籠"。イントロと共にステージを隠していたスクリーンは引き上げられ、RADWIMPSが全貌を表すと会場からは嬉し悲鳴が巻き起こる。3曲目の"光"はRADWIMPSの爆発そのものであった。桑原彰(Gt.Cho)のダウン・ピッキングが爽快に響き渡り《私たちは光った》という裏表もないストレートな言葉が突き刺さる。「行けんのか横浜!」野田の煽りで始まった"AADAAKOODAA"では今回のツアーから特設された前方へ突き出た花道が最後のサビで2メートルほど上がるという規格外の演出を見せ、アリーナの上空で気持ち良さそうに踊り舞う野田にオーディエンスの熱は早くも最大限に達する。
「こんばんは、RADWIMPSです。ヤバイな、帰ってきた感がある。ただいま!!」野田の挨拶をファンは「おかえり!!」と温かく迎える。「じゃんじゃん歌うんで最後まで宜しく!!」と笑顔で言う野田は心から嬉しそうに見えた。"アイアンバイブル"では5人編成となったRADWIMPSの見事なアンサンブルが心地よく響く。6曲目は『人間開花』に収録された"O&O"が披露される。武田祐介(B.Cho)はベースを置き手元でサウンドを打ち込んでいき、ゴスペルの美しい響きに酔ってしまう。"アメノヒニキク"はメンバーがラジオで演奏が難しいと語っていたが、音源を超えるスケールで曲は展開させて行く。陰湿なビートが刻まれる中でメロディは瞬く間に展開していき終盤ではステージ全体に雨が土砂降りの如く降り注ぐ。その様はスクリーンの映像という事を忘れてしまいそうなくらい壮大なものであった。「全部届いてます、ありがとう」野田が歪んだ音を鳴らすと《 ロックバンドなんてもんをやっていてよかった / 間違ってなんかない そんなふうに今はただ思えるよ》と高らかに歌い上げギターを掻き鳴らし"トアルハルノヒ"が始まる。歌い出しの歌詞は野田のフロントマンとしての決意宣言のようにも聞こえて筆者は涙が溢れるのを必死に耐えるしかなかった。
野田はピアノの前に座り和音を奏でると12年目を歩むRADWIMPSへの想いと人間について語り出した。「僕は歌を歌う時に誰一人こんな気持ち分かるはずないって歌ってたけど、現にこうしてあなたが足を運んで下さってる時点できっと何処かしらに何かしらの共感なり、何かしらの叱咤激励なり、何かしらの情を持って来てくれてる気がして、それって凄い事だなって思ってて。きっといちいち傷付いたり、いちいち喜んだりして生きてるあなたと僕はきっと"棒人間"なんだと思います」野田が歌って来た歌は恐ろしいほど繊細で、恐ろしいほど人間味があり、筆者はその言葉に支えられながら、時には傷付きながら生きて来た。それは筆者だけでなくRADWIMPSの音楽を愛すファンに共通する点であると思う。だからこそ、この"棒人間"は酷なほど人間という個体を媒介し、見透かして賛美しているのだ。このツアー最大の肝はこの"棒人間"に凝縮されていたようにも感じた。

演奏し終えた野田はステージ中央に位置したピアノからステージ端に位置したピアノへ移動。それまでの間、桑原と武田は向き合うと"Bring me the morning "をギターとベースで奏でる。それに続き、野田はピアノで"三葉のテーマ"を響かせた。映画『君の名は。』のヒロインである宮水三葉が実は3年前に瀧へ会いに行っていたという事実が明らかになる、何とも切ない場面に流れていたのがこの曲だ。センチメンタルに曲を受け止めているとその音色は「スパークル [original ver.]」のイントロを奏で始める。会場があまりの美しさに溜め息をしたようにも感じた。映画『君の名は。』を観た誰もがあの瞬間、映画のワンシーンを脳内で流していたに違いない。野田のファルセットが清冽に響き、桑原のギターエフェクトが空間に優しく音を添え、武田のベースは時を刻むように低音を響かせる。ステージ全体に配置された照明が星のように輝き、満天の星空を出現させるとそこはライブ空間を超越した幻想世界そのものであった。

会場がしっとりとした空気感に包まれた後は桑原のトークが会場を和ませる。昨年から及ぶダイエットにより明らかに痩せた桑原だが中身は全く変わらず安心。桑原が横浜でのエピソードを語ったのだがこれが見事に滑る。野田から「誰も笑ってないじゃん(笑)」と的確なツッコミ。「今日初めてライブ来た人?」と野田が訊くと会場からはボチボチと手が上がる。思ったより少なかったのか野田が驚きを見せ「じゃあここはいつもの常連組って事ですね!?」と訊くと会場から盛大な拍手が巻き起こる。
「DADADADADADADA‼︎」のシャウトと共にRADWIMPSの代名詞とも言えるライブ定番曲"DADA "が披露され「よく出来ました」とお約束の言葉で締めると続けて演奏されたのは"セツナレンサ"。バキバキなサウンドが掻き鳴らさたかと思うとそのサウンドは一転しクリアに響き渡る。"おしゃかしゃま"では桑原のギターと武田のベースの掛け合いが始まる。ツインドラムを活かしたアレンジでその掛け合いに森瑞希(Dr.)と刄田綴色(Dr.)も入り込むとそのサウンドは凄まじさを増していく。その中央で指揮者のように踊り乱れる野田は横浜アリーナの1万人を白熱に包み込んでいく。

武田のMCでサポートメンバーであるドラマーの2人が紹介されると会場は「みっきー!刄田さん!」と声が飛び交う。5人編成となって約1年。様々な戸惑いがあったと思うがファンは温かくサポートメンバーを向かい入れた。MCの後半では野田が「武田のモノマネ見たいなぁ」とまさかの無茶振り。「いつもやってるやつあるじゃん(笑)」という野田の振りに会場からも「おお!?」と煽りが入る。武田が「どんだけ〜」とIKKOのモノマネを披露すると会場は爆笑に包まれた。何ともメンバーとファンの距離が近い良い空間である。

「最後飛ばすぜい!」という野田の叫びと共に本編はいよいよクライマックスへ近づいていく。ツインドラムの連打は興奮のボルテージを高め、"ます。"のイントロを野田と桑原が向かい合わせで奏でる瞬間はいつ見てもカッコいい。疾走するアンサンブルはそのまま野田のコール&レスポンスへ。"君と羊と青"ではステージと客席が一体となり抜群の安定感で盛り上がりを見せる。お約束となっている「もう1回!もう1回!」のコールが始まると野田はぶんぶんと腕を振り回し気合を入れたが、まさかのリフ失敗。会場が笑いで包まれるというワンシーンもあった。「一緒に歌いたかったです。ここで歌うの初めてなんで……"前前前世"!!」昨年の邦楽界を代表するヒットナンバーである"前前前世 [original ver.]"はRADWIMPSの新しい代名詞として君臨し、その紛れもない名曲に1万人が熱狂した。本編の最後を飾ったのはピアノバラード"告白"。洗練されたアンサンブルに乗せて語られる愛の告白は美しい余韻を残し、RADWIMPSはステージを去っていった。
アンコールを待機する会場では"もしも"の大合唱。アンコールでは横浜の後方に設けられたキーボードが置かれたサブステージに野田が登場し会場は大混乱。サブステージに上がった野田は「ふと思ったんだけどさ、今携帯持ってるんだけどさインスタ生配信ってどうやってやるんですか?」と漏らす。まさかの展開に会場は大盛り上がり。操作にてこずりながらも、野田洋次郎Instagram生配信デビューの瞬間であった。「横浜元気かい!?わっ!コメント凄い!こうなってんだ!(笑)」と携帯で360度広がる横浜アリーナを撮影しながら喜ぶ野田はオモチャを目の前にした子どものようにも見えた。Instagram生配信を終えた野田がキーボードの前に腰を下ろし弾き語り始めたのは"週刊少年ジャンプ"。「大人なんていない」そんな一貫した思いを持ち続けた野田が"大人"と呼ばれる立場に立った今だからこそ歌えた心温まる応援歌である。次にサブステージにはギターとベースを持った桑原と武田が登場。2人がサブステージに上がるまで、キーボードで"糸守高校"をさらりと弾く野田。桑原は笑いを狙って会場スタッフの衣装で登場したのだがギターを肩かけていたので客に気付かれず、又しても滑る。野田と武田に突っ込まれながらも楽しそうな桑原。そんな3人から演奏が始まったのは"いいんですか?"。演奏しながらサブステージからアリーナを経由して本ステージへ戻るとツインドラムが入り本格的なバンドサウンドへ一変。サプライズであり最高のパフォーマンスであった。
「もう1曲やりますか!!?あ……でも"なんでもないや"の方が良い……?」と野田が漏らすと会場は「両方!両方!」と叫ぶ。まぁ、当然である。「じゃあどっちか、どっちか選んで(笑)」と野田。選べるわけないのに何とも意地悪なボーカルである。「良い?俺が歌いたいやつ歌って良い?最後にみんなで歌ってください!今日はありがとう!幸せでした!」と言うと演奏されたのは"有心論"。この楽曲が発売されてから11年。RADWIMPSの代表曲でもあり、これまで数々のライブで歌われ、2015年の『RADWIMPSの胎盤』ツアーでは米津玄師、ONE OK ROCK、桜井和寿(Mr.Children)とこの曲でコラボするなど名曲の位置を確立してきた。RADWIMPSの演奏を掻き消してしまうほどの大合唱はこの曲がどれだけ愛されているかの証明でもあった。演奏を終えた5人は花道で手を繋ぎ頭を長く下げた。その姿に会場からは鳴り止まない拍手が送られる。これで終わりかと思いきや野田が「じゃあもう1曲やるか!」とまさかのサプライズである。どれだけサプライズ精神旺盛なのか。2時半にも及んだステージのラストを飾ったのは"なんでもないや (movie ver.)"。映画『君の名は。』のエンディングとして多くの人に愛されたRADWIMPSにしか歌えないラブソングを自然体で共有できた事は幸せそのものであった。《もう少しだけでいい / あと少しだけでいい / もう少しだけくっついていようか》そんな歌詞はあの会場にいた全員が抱えた密かな想いと重なるものがあったのではないだろうか。最後のサビを会場のファンに歌わせ、野田はそれを噛み締めているようだった。胸に切なく突き刺さるラブバラードは『君の名は。』の垣根も超えて美しく響き渡った。演奏終了後、メンバーは手を振りながらステージを去っていった。
素晴らしいライブだったとしか言いようがない。ツインドラムの精度も格段に上がっていたのは一目瞭然。そして新しかった。これまでのRADWIMPSのライブとは全く違った感触であった。それは演出が斬新だったのは勿論だが『人間開花』というアルバムの楽曲達がストレートに輝き続けているからに尽きると思う。『人間開花』を聴きながらどんなライブ演出になるのか期待していたが、そんな期待の更に上を行く最高のライブであった。今回のツアーはアルバム『人間開花』を提げてのライブツアーという名目だが、筆者から『君の名は。』も付 け加えて置こう。サウンドトラックアルバム『君の名は。』と『人間開花』という2枚のアルバムを提げたツアー。それがこの『Human Bloom Tour 2017』である。奇跡のツアーは今後も全国のファンを魅了して行くに違いない。(やまだ)



RADWIMPS Human Bloon Tour 2017
2017.03.07 (Tue.) Yokohama arena
  1. Lights go out
  2. 夢灯籠

  3. AADAAKOODAA
  4. アイアンバイブル
  5. O&O
  6. アメノヒニキク
  7. トアルハルノヒ
  8. 棒人間
  9. Bring me the morning 
  10. 三葉のテーマ
  11. スパークル [original ver.]
  12. DADA
  13. セツナレンサ
  14. おしゃかしゃま
  15. ます。
  16. 君と羊と青
  17. 前前前世 [original ver.]
  18. 告白
〈encore〉
20.  週刊少年ジャンプ
21.  糸守高校
23.  いいんですか?
24.  有心論
25.  なんでもないや (movie ver.)



















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