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はじめに

2014年にメジャーデビューを果たした新進気鋭のロックバンド、味噌汁's。メジャーデビュー以降、1stアルバムのリリース、野外フェス出演、自らが監修した即席味噌汁の発売と新人バンドらしからぬ華々しい活動が続いた彼らだが、実はインディーズ時代からある黒い噂が後を絶たない。それは味噌汁'sがロックバンド、RADWIMPSの覆面バンドなのではないかという思わず耳を疑うような話だ。因みに両者はこの噂を真っ向から否定。だが火のないところに煙は立たぬという言葉があるように、これは今一度両バンドのことを深掘りして真実を明らかにする必要がありそうだ。本稿では膨大なデータを参考に9つの観点から徹底的にこの謎に迫っていきたいと思う。

① 味噌汁'sとは

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2005年結成のロック・バンド。メンバーはジョン次郎(Vo)、ポール(Gt)、マッカー(Ba)、トニー(Dr)の4名。メンバーの名前からすると外人だと思われがちだが全員が生粋の日本人であり、明言はされてないが偽名を使っての活動だということは言うまでもない。“味”と大きく書かれた赤いTシャツと鼻眼鏡が特徴。2014年にはメジャーデビューアルバム『ME SO SHE LOOSE』、2015年7月には初の映像作品『MISO TV&Songs』をリリースした。

② 味噌汁'sとRADWIMPSの交流関係について

味噌汁'sと交流関係があるバンドとしてまず…というより唯一名前が挙がるのが誰あろうRADWIMPSである。2005年にシングル『25コ目の染色体』でメジャーデビューを果たし、その独特な死生観と唯一無二のサウンドでロックファンから絶大な支持を受けている。昨年2016年には新海誠監督の長編アニメーション映画『君の名は。』の劇伴を務め、年末にはNHK紅白歌合戦への初出場も果たすなど世間にその名を轟かせたのは記憶に新しい。

そんな両者の交流が始まったのはRADWIMPSが2006年にリリースしたシングル『有心論』から。同シングルのカップリングに収録されたのが味噌汁'sのデビュー曲「ジェニファー山田さん」であった。醜い世界に生きる者の悲哀を独自の視点から紐解き、愛と平和をアイロニカルに包みながらさらりと歌い上げた名曲である。また、同年にRADWIMPSがリリースした通算4枚目のアルバム『RADWIMPS 4〜おかずのごはん〜』にも味噌汁'sの「泣きたい夜ってこんな感じ」(別名「夜泣き」とも)という曲がシークレットトラックとして収録されているのだが、これについては後ほど詳しく見ていきたい。

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 (「RADWIMPS TOUR 2007 “春巻き”」にて軽快に踊る味噌汁's)

さらに、味噌汁'sはRADWIMPSのライブにもゲストアクトとして参加している。2006年のツアー「ソナタと行く冬のツアー」では9mm parabellum bulletと共に、翌年2007年に行われた「RADWIMPS TOUR 2007 “春巻き”」、「セプテンバーまだじゃん。」では単独でゲストとして登場。因みに当時「セプテンバー…」のライブレポートを執筆した某ミュージック誌のライターは味噌汁'sを"変名バンド"とし、ライブ演出はRADWIMPSの早着替えと評している。

このようにかなり盛んに交流をしていた味噌汁'sとRADWIMPS。しかし「セプテンバーまだじゃん。」を最後に交流は途絶えることとなる。その明確な原因は不明であるが完全に関係が途切れた訳ではなかったようだ。その6年後の2013年にRADWIMPSが宮城で行った野外ワンマンライブ「青とメメメ」にて味噌汁'sがゲストアクトとして登場したのだ。

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(「青とメメメ」にゲスト出演した味噌汁's)

「青とメメメ」のアンコールで登場した味噌汁'sは自身の代表曲である「ジェニファー山田さん」と7年ぶりの新曲「にっぽんぽん」を初披露し会場を沸かせた。その後、アンコールで登場したRADWIMPSは味噌汁'sの新曲披露に呼応するように当時未発表曲だった新曲「ラストバージン」を披露するのだがそれはまた別の話。 また、同年にRADWIMPSがリリースしたシングル『五月の蝿/ラストバージン』のカップリングには味噌汁'sの新曲「にっぽんぽん」が収録されている。RADWIMPSと味噌汁'sの楽曲が同じCDに収録されたのはなんと約7年ぶりのことであった。実は2014年に味噌汁'sのメジャーデビューが決まったときに野田洋次郎(Vo/Gt/Pf)はジョン次郎にバンド名を変更することを勧めたそうだが、説得も虚しく“味噌汁's”のままデビューしたというエピソードが残っており、この時点では両者の交流は続いてたと見て問題ないだろう。

③ 両者の不仲説を検証

味噌汁'sとRADWIMPSが同一人物と言われている一方で両者の不仲説も噂されている。たしかにバンドマンにとって「〇〇に似ている」と言われるなら未だしも「〇〇と××って同一人物なんでしょ」と言われるのは心外でしかないだろう。そのような噂が立ってしまっては両バンドの関係が気まずくなるのも無理はない。では実際に味噌汁'sとRADWIMPSはお互いのこもをどう思っているのだろうか。過去の発言からお互いの印象をまとめていきたい。

RADWIMPSから味噌汁'sへの評価
「絶対コイツら(味噌汁's)カッコいいよと思って対バンしたんだよね。もう世間のみんな見てくれよって気持ちで」(野田洋次郎)
「僕らもアルバム聴かせて貰ったんですけど勢いがあってね、本当僕らに無い物を沢山持ってるバンドだなってつくづく思いました」(野田洋次郎)
「とても良いアルバムでした」(武田祐介)

このようにRADWIMPSメンバーは味噌汁'sの1stアルバム『ME SO SHE LOOSE』をかなり高く評価しているのがわかる。また味噌汁'sがメジャーデビューした際に野田洋次郎はコメントを寄せており、そこには味噌汁'sが盟友であり良きライバルであると綴られており、両者の強い信頼関係が垣間見える。またそんな味噌汁'sへの情の深さはRADWIMPSのレコーディング風景からも伺える。

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(サウンドトラック『君の名は。』初回限定盤附属DVDより「夢灯籠」製作時のスタジオ風景)

『君の名は。』の劇伴作業に打ち込むRADWIMPSメンバーだが、桑原彰(Gt)氏が着用しているTシャツに注目して頂きたい。味噌汁'sのアルバム名が大きく印刷された『ME SO SHE LOOSE』Tシャツである。ただ桑原氏はカメラがスタジオに入ると服装を意識して変えてくる性格の持ち主なので単にカメラを意識した演出かもしれない。他にもまだある。
上記はRADWIMPSが地上波初登場を果たしたテレビ朝日「ミュージックステーション」終了後の桑原氏のツイートである。ここで注目してほしいのはMステのティッシュではなく、左に写った捻れた赤と黒の柄のタオルである。これは恐らくだが味噌汁'sのグッズである可能性が高い。このようにRADWIMPSメンバー(特に桑原氏)は日常的に味噌汁's関連のグッズを使うほど味噌汁'sを好んでいるのだ。

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(「氣志團万博2014」でも発売された味噌汁'sのオフィシャルグッズ「味噌汁's タオル」¥2,200)

味噌汁'sからRADWIMPSへの評価
「彼ら(RADWIMPS)の話はちょっと嫌気がさすよね。常に抱き合わせて考えられるのが正直癪で、まぁたしかに最初はたまたま対バンしたりしてたけど。うちらが彼らの前座みたいな位置にいるのが本当に許せないっていうかちょっと心外だよね。僕らはもっと先を行ってる。もっともっと先を行ってる」(ジョン次郎)
「(RADは)いけ好かない。いつも比べられるから鼻に付く」(ポール)

 RADWIMPSが味噌汁'sに対して好意を向けていたのと対照的に味噌汁'sはRADWIMPSの存在を快く思ってないようだ。両者は不仲と言うよりも味噌汁'sが一方的にRADWIMPSを嫌ってるだけなのである。メジャーデビュー前はRADWIMPSに媚びを売り、メジャーデビューした途端に手のひらを返してRADWIMPSを見下しているようにも見えてしまうが、実はジョン次郎の「先を行ってる」発言はそこまで的外れでもないのだ。次の項目を見てほしい。

④ RADWIMPSより前からアニメの可能性を見据えていた味噌汁's

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昨年2016年に新海誠監督の長編アニメーション映画『君の名は。』が公開され、その映画の劇伴を担当したRADWIMPSが大きな注目を浴びた。劇中の音楽をすべて彼らが制作するという前代未聞の試みによって新海誠監督が描く美しい世界観とRADWIMPSの洗練された音楽が秒単位で調和し、公開から半年経った現在でも世界中を感動の渦に巻き込んでいる。

だがそんなRADWIMPSより2年も前に味噌汁'sがテレビアニメに楽曲を提供していたことを皆さんはご存じだろうか。そう思うと先述したジョン次郎の「先を行ってる」発言がそこまで的外れでないことに気づく。たしかにジョン次郎は野田洋次郎よりいち早くアニメというフィールドに可能性を感じていたのかもしれない。2014年からテレビ東京で放送された「マジンボーン」。主人公 竜神翔悟がボーンカードの力によってボーンファイターとなり、地球を守るため、謎の敵ダークファイターと戦う物語である。 このアニメのエンディングテーマとして味噌汁'sの「OKAN GOMEN」が起用されている。 因みにこのアニメと味噌汁'sの楽曲は恐ろしいほど合ってない。


⑤ 味噌汁'sとRADWIMPSを結び付ける疑惑の2曲

味噌汁'sがRADWIMPSの覆面バンドなのではないかという噂が囁かれる理由として「とにかくもう容姿がそっくり」というものも挙げられるが、本稿では味噌汁'sとRADWIMPSを結び付ける疑惑の2曲からこの謎を紐解いていきたいと思う。

まずは「泣きたい夜ってこんな感じ」。先ほども少し触れたがRADWIMPSの4thアルバムのシークレットトラックとして収録された楽曲である。ここである疑問が生じる。「泣きたい夜ってこんな感じ」は味噌汁'sの楽曲ではないのかと。本楽曲は『おかずのごはん』レコーディングの最後の最後に野田洋次郎の急な考案により制作された楽曲である。この楽曲を入れた理由は「このままだと(アルバムが)マジメすぎるんじゃないかと思ったから」。そこからの経緯はよく分からないが、本楽曲をRADWIMPSが制作して味噌汁'sへ楽曲提供した曲ということなのか、はたまたRADWIMPSが味噌汁'sへ楽曲制作を依頼したということなのだろうか、謎のままである。

そして次は「にっぽんぽん」。味噌汁'sの1stアルバムに収録されたテイクではなく、RADWIMPSのシングル『五月の蝿/ラストバージン』のカップリングとして収録されたテイクをフィーチャーする。このテイクではついに味噌汁'sからボロが出たようにも思える。曲の冒頭にジョン次郎のこんな台詞が入る。「6年ぶりの味噌汁's〜!ここに登場〜!6年間何をしてたかと言うと〜!タケダァ〜」その呼びかけに対し何故かトニーが「ご飯食べてましたーー!……ぇぁっ」と語尾を濁した発言をするのだ。そこから「ソースより〜醤油だろ〜♪」と歌が始まるわけだが、このセリフは看過することができない。もし本当に味噌汁'sがRADWIMPSの覆面バンドなのだとしたら彼らはとんでもない大失態をしたことになる。

戦犯はジョン次郎。本来は「トニー」と呼びかけるべき部分を「タケダ」と言ってしまったのだ。この「タケダ」とはRADWIMPSメンバーである武田祐介のことである可能性が高い。そして「タケダ〜」の呼びかけに対してトニーが「ご飯食べてました!」と発言するのもおかしな話である。なぜ別人の名前を言われて元気に彼が返事をしたのか。これらを鑑みると"トニー=武田祐介"と考えるのが最も合理的だ。そして思わず語尾を濁らせていることから非常に動揺している様子が伺える。因みにジョンの「6年ぶり」というのは7年ぶりの間違い(ジョン本人がアウトロ後に訂正)。そこの詰めの甘さも"味噌汁's=RADWIMPS"の裏付けになるのではないだろうか。

⑥ 桑原彰とポールのギター兼用疑惑について

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(左:2015年「RADWIMPSの胎盤」の楽屋にて音合せをする桑原氏。右:2014年「第1回全国お味噌汁の会」に出演したポール)

上の写真を見てもらったら分かると思うが、桑原氏の使っているテレキャスとポールが使っているテレキャスは同一である可能性がかなり高い。ボディに貼られた“味”のシールの位置といい角度といい同じものとしか思えない。ということは桑原氏とポールはギターを兼用しているということか。ただRADのことを「鼻に付く」と一蹴していたポールがそう簡単に桑原氏にギターを貸すものだろうか。いや、これまでRADのおかげでライブやCDレコーディングを経験してきたポールとしてはRADのメンバーである桑原氏に恩を感じている部分が必ずあったのかもしれない。無論これで味噌汁'sがRADの覆面バンドだった場合は兼用もクソもないのだが。

⑦ RADWIMPSに対するアンチテーゼか?疑惑の帽子「me me me」

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(2014/6/12放送 スペースシャワーTV「音楽ヒミツ情報機関 MI6」より)

2014年に放送されたスペースシャワーTVのインタビューにてジョン次郎は「me me me」とデザインされた帽子を被っていた“自分 自分 自分”という己を突き通す味噌汁'sの姿勢を思えばこのデザインも不思議ではないが、彼らがRADWIMPSとかなり近い距離感のバンドということを鑑みると訳が変わってくる。

まずこの“me me me”という文字をローマ字読みした場合「メメメ」と読むことができる。このインタビューの前年にはRADWIMPSが開催した野外ワンマンライブ「青とメメメ」にゲストアクトとして登場した彼ら。それを遠回しにおちょくっているようにも見える。また、RADWIMPSの楽曲「me me she」へのアンチテーゼとも解釈できるだろう。この“me me she”というタイトルには彼女より自分のことを「僕 僕:彼女(2:1)」という比率で優先してしまった女々しい男の感情を落とし込まれているという逸話があるが、ジョン次郎が被っている帽子の“me me me”には、ただただ自分という強いエゴのみが存在し、そこには彼女への未練など毛ほども感じさせない。そうRADWIMPSへのアンチテーゼなのだ。この帽子の意図は不明だが何か意味があるに違いない。

⑧ 味噌汁's ≠ RADWIMPSの決定的な証拠は映像作品『生春巻き』にあり?

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(映像作品『生春巻き』より味噌汁'sのステージを超つまらなさそうに観るRADWIMPSメンバー)

RADWIMPSが2007年に行った「春巻き」ツアーの模様を収めたライブ映像作品『生春巻き』。先述した通り同ツアーには味噌汁'sがゲストアクトとして出演しているが、この『生春巻き』では、味噌汁'sのツアーにRADWIMPSがゲストで登場したということになっているから驚きだ。味噌汁'sが「ジェニファー山田さん」を演奏し会場を沸かせている様子を会場の後方から無表情で眺めるRADWIMPSのメンバー。彼らが味噌汁'sを客観的に見ることは(彼等が同一人物だった場合)物理的に不可能であり、必然的に味噌汁's ≠ RADWIMPS を決定づけることに。そういった点でもいろいろと曰く付きな映像作品なのである。



⑨ 味噌汁'sの映像作品『MISO TV & SONGS』にRADWIMPSワード?

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同じく曰く付きの作品として味噌汁'sが2015年にリリースした映像作品『MISO TV & SONGS』も紹介しておこう。なんと本作品にはRADWIMPSを連想させるワードが散見されるのだ。味噌汁'sが2014年に出演したフェスの映像がテレビ番組のような編集を施されているのが特徴的だが、その番組名が気になって仕方がない。まずは「ジェニファー山田さん VS 宇宙怪獣メメメ」という番組タイトル。“宇宙怪獣メメメ”とはRADWIMPSの「青とメメメ」からの引用とも捉えることができ「ジョン&ヨージローの週間天気予報」というタイトルに関しては包み隠さずまんま固有名詞である。ヨージローて。なぜ、RADWIMPSのボーカルの名前が登場するのかは分からないが、あまりにも不自然だ。インタビューで「RADWIMPSと比べてほしくない」と言っていた強気な味噌汁'sだが、こんな露骨な編集をされてしまっては自ら「比べてください」と言ってるようなものである。

MISO TV & SONGS [DVD]
味噌汁’s
2015-07-01


結論

味噌汁'sはRADWIMPSの覆面バンドである可能性が極めて高いが断言することはできない。

容姿が似ている、声も演奏も似ている。恐らくこれからも味噌汁'sとRADWIMPSは同一人物だと言われるであろう。RADWIMPSが鼻眼鏡を付けて変装して「味噌汁's」と名乗り活動をしている可能性が高いのは事実だが、それを僕がここで断言することはできない。両バンドのフロントマンが頑なにそれを否定しているのだからそれ以上もそれ以下もないのである。「え、じゃあこのブログ記事いったい何だったん?」と言いたい読者の方々もたくさんいるとは思いますが飲み込んでください。僕も閉口するしかないので。野田洋次郎氏によるとRADWIMPSと味噌汁'sは切磋琢磨しお互いを高め合って来た仲だと言います。そんな素敵な関係性で現在の両バンドがあるのならそれは大変嬉しいことじゃないですか。も、もう、余計な詮索などせずに、それだけで十分じゃないですか。ねぇ……?信じるか信じないなはあなたしだいd……ッ。(やまだ)