サザンオールスターズが15枚目のオリジナル・アルバム『葡萄』をリリースして本日で丸2年となる。今作を『キラーストリート』から10年と捉えるか桑田佳祐の『MUSICMAN』から4年と捉えるかは皆さんに任せるとしよう。2013年に5年という活動休止期間を経て復活を果たしたサザンオールスターズはニューシングル『ピースとハイライト』を発売。その年には野外スタジアムツアーが開催され全国をサザン一色に染め上げた。翌年には《進撃のサザン!2014》を掲げ、ニューシングル『東京VICTORY』をリリースし年末には横浜アリーナで年越しライブを行なった。そんな《進撃》の最後に掲げられていたのがサザンオールスターズ、10年ぶりのニューアルバムという大プロジェクトであった。2015年の年明けと同時にアルバムの発売日とアルバムを提げた全国ツアーの詳細が発表された。発売日は3月31日。2014年内の発売には至らなかったが、年度最終日には間に合わせて見せた。満を持して届けられたアルバム『葡萄』。初めてこのアルバムを聴いた時、ちょうど2年前の事になるのだがステレオの前で思わず仰け反った。2005年にリリースされた前作『キラーストリート』をも凌駕した超大作であった。

『葡萄』はサザンポップスの集大成であり、全く新しい境地でもあった。これまで育まれて来た"サザンらしさ"をしっかりと踏襲した上でこの『葡萄』は絶妙なバランスを保っている。既出曲であった「ピースとハイライト」「栄光の男」「蛍」や「東京VICTORY」「天国オン・ザ・ビーチ」を何の違和感もなく一つのアルバムに落とし込んだ技術には驚嘆せざるを得ない。バラエティに富んだ楽曲達からはサザンオールスターズというバンドの多面性が溢れていて『キラーストリート』の作り込まれ過ぎたアルバムから抜け出した印象を受ける。また今作では日本語の歌詞がかなり多い。言ってしまえば英詞が極端に少ない。歌謡曲のような空気感を取り込んだ今作ではそれが非常に大きな肝となっている。 

そして 『葡萄』というタイトルが実に素晴らしい。作家である渡辺淳一の処女作『葡萄』が由来となっている。"葡萄"という語感から染み出した妙な艶っぽさ、エロティシズムはこのアルバムの味でもある。それだけでなく「Missing Persons」「ピースとハイライト」のような世相を反映した楽曲や「はっぴいえんど」「彼氏になりたくて」のような爽やかなラブソング。「栄光の男」「イヤな事だらけの世の中で」「バラ色の人生」のような人生の悲哀を歌った楽曲などなど。聴けば聴くほど深みのある楽曲ばかりである。1曲目である「アロエ」を皮切りに展開される全16曲は独創的でありながら、どこか普遍的だ。邪道でもあり王道でもある。桑田佳祐がこれまで歩んで来た道のり、時代背景、ノウハウ、音楽のルーツが惜しげも無く詰め込まれたドキュメント性の溢れるアルバムだ。

『キラーストリート』のインタビューで桑田佳祐はこれがラストアルバムになる覚悟で作ったと話している。その言葉が無責任な物だったとは思わない。実際『キラーストリート』からは当時の悲壮感のようなものを感じざるを得ない。サザンオールスターズが2008年にわざわざ無期限活動休止を宣言した訳も頷ける。そこから桑田佳祐自身が大病を患ったり、東日本大地震が発生したりと良くも悪くも濃密な時間が流れた。どれもセンセーショナルなものだったが、その時代の中で桑田佳祐も揉まれ揉まれ続けた。それらを乗り越えて描き出された『葡萄』。『キラーストリート』から10年という空白を補いつつ、更にお釣りがくる程の超大作であると断言したい。『葡萄』のキャッチコピーで《 大衆音楽の粋、ここに極まれり!》と謳っていたが、その言葉に一切偽りはないと付け足しておこう。まるでワインのような風味。まるで短篇小説のような物語性。稀代のモンスターバンドが育んだ『葡萄』は2年経った今でも美味しく成熟している。(やまだ)


(サザンオールスターズ ニューアルバム『葡萄』スペシャルトレーラー)
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