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  RADWIMPSの新曲「そっけない」を皆さんはもうお聴きになっただろうか。まだ聴いてないという方はこの記事の最後にYouTubeリンクを掲載しておくので是が非でも聴いて頂きたい。もう単刀直入に言ってしまおう。名曲が届いた。こういう言葉を使うのは極力避けたいのだが、この言葉を使わずしてこの曲を形容する事が出来なかった。
  初めて聴いた瞬間からこの楽曲の空気感に惹きこまれてしまい、昨日公開されたMusic Videoで完全にノックアウトされた。ずるい。1から10まで全部がずっるい。何処かにこの感情を吐き出さないといよいよパンクしそうだと危惧して今このコラムを書いている。どうか最後までお付き合い下さい。

  今作「そっけない」は12月12日に発売されるニューアルバム『ANTI ANTI GENERATION』に収録される1曲。洗練されたピアノの伴奏とメロウな桑原彰(Gt.)のギターのリフが織りなす美しいテクスチャアもさる事ながらやっぱり野田洋次郎(Vo.)が紡ぎ出す言葉が凄く良い。《君の分厚い恋の履歴に残ることに興味なんかないよ / 君のたった一人になる以外はどうしようもない程にもどかしくて不器用で、君しか見えていない一途な男の恋心。そんな男の気持ちを知ってか知らずかそっけない態度をとる君。その間で揺れる淡い感情が見事に落とし込まれている。
  
  野田洋次郎本人が自身のTwitterで新しい角度のラブソングと言及していたように、従来のRADWIMPSのラブソングとは一線を画す新曲「そっけない」。この曲でラブソングを歌うRADWIMPSとして新しい境地を開拓したかのように思えるが当初この曲は自分が歌う雰囲気では無いという野田の意見から別のボーカリストに歌わせる事が検討されていた。最終的にスタッフの「洋次郎の声しかない。あの声で聴きたい」という熱い想いに押され野田洋次郎自身がボーカルを務める事になったのだが、その判断は決して間違っていなかったようだ。
  確かに「有心論」や「ふたりごと」「ラストバージン」や「スパークル」と言った彼らの代表格を担うラブソングを羅列してみてもどれも恋の渦中であったり恋の終わりを歌っていて、恋愛に於けるプロローグ部分にフォーカスした曲というのは見当たらない。だからこその《恋がなんだかもう分からないんだ》なのかもしれないが、これまで独自の視点から恋愛を膨大な言葉数で紐解いて来た野田がそう歌ってるのが実に新鮮に響いたりもする。1番と2番のサビでまるっきり同じ歌詞が歌われているのも主人公が何度もその葛藤を繰り返している事の表れのようでグッと来るものがある。
  
  今作「そっけない」はちょっと面白いプロモーション形態が取られていて、公に発表される前に凡ゆるラジオ局に向けて「そっけない」を収録したCDが丁寧に封入されたお手紙がRADWIMPS側から届けられていたのだ。そこに同封されたスタッフの渡辺雅敏さんが書いた手紙にはこの楽曲に纏わるエピソードと楽曲への熱い想いがしたためられていた。その音源を11月12日の早朝から各ラジオ局が大々的に放送した事で何も知らされてなかった僕らはサプライズ的な意味合いで初めてこの曲と対峙したのだった。

  ラジオ局に送られた手紙の中に渡辺さんが綴ったこんな一文がある。「RADWIMPSの曲はいつもそうなのだが、大切に大切に届けたいと思った。そんなふうに思ったことまで、届けたいと思った」スタッフにこんな事を書かせてしまう楽曲が、そんな風にして届けられた楽曲がそっけない訳がない。この曲が制作されてから僕らに届くまでの過程でどれだけ多くの人々がこの曲に熱意をぶつけたのだろうか。そして今後この曲を聴いたリスナーがどれだけの想いを馳せて行くのだろうか。自分自身もまたその中の1人で居られる事が堪らなく嬉しい。(やまだ)



(RADWIMPS「そっけない」Music Video)