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  先月、RADWIMPSとしてメジャー通算7枚目となるオリジナルアルバム『ANTI ANTI GENERATION』をリリースした野田洋次郎。この1枚については後々このブログでも煎じ詰めていきたいと思っているので少々お待ち下さい。さて本題に入るが、このニューアルバムとほぼ同時期に飛び込んできたのが野田洋次郎が新たに映画主題歌の作詞作曲とプロデュースを担当するという一報であった。

  またかよ!此奴…自分の作った歌を他の誰かに歌わせる事に完全にハマっていやがる…!ここ数年の野田洋次郎はまさに枯れない泉。バンドのフロントマンとしてだけではなく、自身のソロプロジェクトであるillionや他ミュージシャンへの楽曲提供&プロデュースを手掛けるという一面も持ち合わせている野田。ちょっとここらで野田洋次郎がこれまで楽曲提供&プロデュースを担当してきた楽曲達を振り返ってみましょう。過去のプロデュース作品を掘り下げるという事はRADWIMPSのバイオグラフィーを普段とは違った角度から見るという作業でもあり『ANTI ANTI GENERATION』という意欲作をリリースした今だからこそ見えてくる新たな発見があるはずだ。



①  ラブラドール / Chara 

  野田洋次郎にとって初のプロデュース作品となったのが「ラブラドール」。大先輩であるCharaからのオファーで顔面蒼白になってる当時の彼が容易に想像できるが、実際この曲のプリプロ期間はずっとお腹が痛かったそうで(笑)バンド内で衝突があり一時的な活動休止状態に陥っていた当時のRADWIMPS。野田の中でも混沌とした想いが募っていたと思うが、その渦中で手掛けたこの「ラブラドール」は《全部 愛してしまえばいいよ》という歌詞に引っ張られるように貪欲に愛を求める“僕”の感情が描かれている。レコーディングにはギターに西川進、ベースにBUMP OF CHICKENの直井由文、ドラムにRIZEの金子ノブアキが参加した。ここでのプロデュースの経験は音楽活動に行き詰まっていた野田洋次郎を奮い立たせるきっかけになったに違いない。





 EMI / 寺子屋

EMI
2010-11-10

  
  楽曲提供という形ではないのだが、RADWIMPSがかつて参加したプロジェクトについて触れておこう。EMI ミュージック・ジャパンのレコーディングスタジオ「studio TERRA」が2010年の6月30日をもって23年間の稼働を終了してしまう事を惜しんだ野田洋次郎の発案でスタジオでレコーディングしてきたアーティストに呼びかけ結成されたユニット“寺子屋”。ACIDMAN、the telephones、西川進、フジファブリック、ストレイテナーのホリエアツシ、THE YELLOW MONKEYの吉井和哉、RADWIMPSといった豪華なメンツが顔を揃えた。「EMI」は作曲を野田、作詞を野田と吉井和哉が担当している。EMIを擬人化し《EMI 忘れないよ》《EMI 夢で待ってて》と歌う歌詞には思わず胸が締め付けられてしまう。



 おあいこ / ハナレグミ

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ハナレグミ
2015-08-19





  
  野田洋次郎とは飲み友達でもある永積崇が先述したCharaの「ラブラドール」を聴いて感銘を受けた事がきっかけで実現したこのプロデュース。人生で一番歌ったミュージシャンにハナレグミを挙げるほど野田は永積崇をリスペクトしており、だからこそプロデュースの依頼をされた時にはかなりの葛藤があったようだ。「ハナレグミの音楽は俺がいなくても完成されてて、そこで自分がやる意味はなんだろうって思った」そう語った野田がその意味というものを模索し、探求した結果がこの「おあいこ」である。常に自分の為に歌詞を書いてきた野田にとって、永積は常に誰かの為に歌っているように見えたらしく、誰かのためじゃなく自分のために歌ってもらおうという思い付きからオファーを承諾した。コーラスとアレンジにはクラムボンの原田郁子も参加し素晴らしいハーモニーを聴かせてくれている。





④  蝶々結び / Aimer

蝶々結び
2016-08-08


  RADWIMPSが劇中音楽を担当した新海誠監督の長編アニメーション映画『君の名は。』の公開を目前に控えコンポーザーとしても脂が乗りまくってる野田洋次郎。ここからは野田からのオファーで他ミュージシャンへの楽曲提供&プロデュースが行われていく。実は楽曲自体は2008年頃に製作されていたというこの「蝶々結び」。人と人との繋がりを蝶々結びに比喩して紡がれた言葉の1つ1つは岩井俊二が手がけたMusic Videoでも美しく表現されているので必見。圧巻とも言えるAimerの歌声に更に彩りを加えるのはコーラスとしても参加した野田とハナレグミ。まさに結ばれたんじゃなくて結んだような幸福な関係が生み出した名曲である。因みにこの楽曲を提げてAimerはMステ初出演を果たす事となった。





⑤  フラレガイガール / さユり




  
  もしかしたら“意外性”としてはこのタッグが断トツかもしれない。2016年に野田が2.5次元パラレルシンガーソングライターの“酸欠少女”さユりに楽曲提供をした「フラレガイガール」。こちらも「蝶々結び」同様に楽曲の原型は以前からあったのだが歌い手が見つからず手持ち無沙汰になっていたようだ。そこに必然的にフィットしたのがさユりの力強い歌声。失恋した少女の痛々しい傷心を見事に歌い上げている。最初の段階では楽曲の終わりが湿っぽかったというが、さユりからの「光や未来に向かってくような終わり方はどうでしょう」という提案により現在の形に落ち着いた。それ故に《そろそろ 時間だ ワタシは いくね / 次の 涙も 溜まった頃よ》というフラれたままではなく、それでも生きていこうとする女の子の未来が用意されているのだ。





 ユメマカセSOIL&”PIMP”SESSIONS feat.Yojiro Noda

ユメマカセ
2017-08-23


  楽曲提供&プロデュースという形式とは少しズレてしまうのだが野田洋次郎をヴォーカルとして招いたSOIL&”PIMP”SESSIONSの「ユメマカセ」についても触れておこう。そもそもこの楽曲はTBS系金曜ドラマ『ハロー張りネズミ』の主題歌として書き下ろされたもので、大根監督のアイデアによりこのコラボが実現した。ここでのコラボが後に『ANTI ANTI GENERATION』に収録されている「TIE TONGUE feat.Miyachi,Tabu Zombie」にも繋がっていくので聴いてない人は必聴だ。この「ユメマカセ」の作曲はソイル、作詞と歌を野田が担当し見事な化学反応を起こしてくれている。ダークチックでありながらジャジーでグルービーなサウンド。決して順風満帆ではない人生観を「まぁいいか」と歌い飛ばす歌詞。聴けば聴くほど味わい深くなる濃厚な1曲である。





ナラタージュ / adieu

  都内に通う17歳の女子高生という事以外のプロフィールが一切伏せられている突如シーンに現れた正体不明の女性シンガーadieuのデビュー曲。デビュー曲が映画『ナラタージュ』のタイアップで野田洋次郎のプロデュースってどういう待遇なんですかね。この楽曲については一昨年にコラムを書いてるので是非。映画『ナラタージュ』を観た方なら分かると思うのだが、この楽曲は有村架純演じる主人公の心情そのものなのだ。この曲で掲げられている"時を止める歌声"というコンセプトが象徴しているように静かなその歌い出しから思わず息を飲んでしまう。彼女の儚くも力強く凛とした歌声がストレートに響く。プロフィールを殆ど公表しないという特殊なプロモーション方法も良い方向に働いている。





 気まぐれ雲  / 大野奈々

気まぐれ雲
2019-01-25


  さてさて本日1月25日から配信がスタートとなった新曲「気まぐれ雲」。阿部進之介が主演、俳優の山田孝之がプロデューサーを務めた映画『デイアンドナイト』の主題歌として書き下ろされた今作。清原果耶が劇中の役柄である“大野奈々”の名義でヴォーカルを務め、作詞作曲とプロデュースを野田洋次郎が担当した。野田が『君の名は。』や『空海―KU-KAI― 美しき王妃の謎』でのプロジェクトを通じて培ったオーケストレーションのノウハウがこの曲でも存分に発揮されてるのが分かる。重厚感のあるストリングスは生きる事に不器用な人間たちが抱く“切実な願い”を落とし込んだ歌詞と相見えて、清原果耶の青々しい歌声で昇華されていく。悲しいだけの曲ではない、しっかりと強さが内在した壮大なバラード。映画『デイアンドナイト』は明日1月26日から全国公開される。映画とセットでこの曲を聴いた時、どのような余韻を残してくれるのだろうか。