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RADWIMPSが6月の長野公演を皮切りに開催している全国ツアー『ANTI ANTI GENERATION TOUR 2019』の宮城・セキスイハイムスーパーアリーナ公演(2日目)を観てきた。先月にこのアルバムを提げたツアーのZOZOマリンスタジアム公演を目の当たりにした僕はこのライブを「過渡期であるが故の不完全さを垣間見たライブ」とブログで評し「“完全無欠なRADWIMPS”ではなく、その中で貪欲に変わり続ける“成長過程のRADWIMPS”を楽しめるライブツアーになっているのかもしれない」と締め括った。

それがRADWIMPSにとって初めてのスタジアム公演であった事、まだツアーの序盤だった事を考慮しても1ヶ月前のZOZOマリンスタジアム公演は僕にとって腑に落ちない部分があまりに多過ぎた。それらのリベンジの意味でも僕は一抹の不安を抱えながらツアーの中盤戦であるセキスイハイムスーパーアリーナ公演に出向いたのだ。

ここからはライブの演奏曲や演出を綴っていくのでネタバレを避けたい方はここでブログを閉じる事を強くお勧めしますまた今回のライブツアーのライブレポートは1ヶ月前のZOZOマリンスタジアム公演で既に書いてるので、宮城公演に関してはかなり簡潔なライブレポートにさせて頂いています。ご了承下さい。1ヶ月前に行われたZOZOマリンスタジアム公演のライブレポートはこちらからどうぞ→【ライブレポ】RADWIMPS『ANTI ANTI GENERATION TOUR 2019』初のスタジアム公演で見えた“過渡期であるが故の不完全さ”

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開演予定時間とほぼ同時刻に会場が暗転。アルバム『ANTI ANTI GENERATION』の1曲目に収録にされているインスト曲「Anti Anti overture」がSEとして会場に流れる。ステージ前に雨が降り注ぐ幻想的な演出の向こう側でピアノの前に腰掛けた野田洋次郎 (Vo.&Gt.) の姿が見えると会場からは歓声が上がる。1曲目に演奏されたのはエスニックな世界観で聴かせる「tazuna」。野田はステージの中央に配置されたピアノを弾き、武田祐介 (Ba.) は優雅にウッドベースを奏でている。前回のZOZOマリンスタジアム公演とは全く雰囲気の違う導入に驚かされてしまう。

「宮城、調子はどうだい!?」という野田洋次郎の煽りからEDM調のアッパーチューン「NEVER EVER ENDER」に雪崩れ込むと、1万人が駆け付けた会場はあっという間に興奮の坩堝と化して飛び跳ねる。バンドにとってメジャー初期のナンバー「ギミギミック」やヒップホップとロックバンドの接着地点を提示した「カタルシスト」と続く流れはスタジアム公演と同様だが、スタジアム公演(2日目)で披露された”SOIL&"PIMP"SESSIONSのタブゾンビが率いるホーンセクション「タイタンゾンビズ」が今回は居なかったので限りなく原曲に近いアレンジで披露された。(この後の「アイアンバイブル」も同様)

洋「昨日で感無量なくらいいっぱい宮城を味わったんですけど、1日経つともっと欲しくなるもので人間。まだまだまだまだ歌い足りないし、宮城に残したい気持ちがいっぱいあるので受け取ってくれますか?全力で受けとりゃ○¢£%□△(盛大に噛む)」

会場「(笑)」

洋「まぁここで噛んでおけば曲中で噛まないっていう噂もあるしさ。全力で受け取って貰う覚悟はありますか?最後まで宜しくお願いします」

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彼等がNHKの『18祭』に書き下ろした「万歳千唱」や10年前のアルバム『アルトコロニーの定理』から「謎謎」などライブではかなりご無沙汰な楽曲の披露を交えながらライブは進行して行ったが「アイアンバイブル」では野田がリリックをド忘れして苦笑いで立ち尽くす場面も見られた。そして今回の公演でも特筆すべきは「そっけない」問題。前回のスタジアム公演で「そっけない」のテンポが速くて興醒めしたとブログで綴った所、読者の方から「他の公演でもテンポが速くて困惑した」というコメントを多く頂いた。さて、今回の宮城公演はどうか。花道の特設ステージでキーボードを奏でる野田の姿を祈りながら見つめていると、まさかのイントロで野田が伴奏をミスするハプニング。

洋「ああぁぁぁぁ!嘘ぉぉぉん!」

会場「頑張れー!頑張れー!」

洋「違うんだよ。頑張れとかそう言う感じじゃないんだよ。こっちもプロでやってんだよ…ショックだな。こんなの今まで無いんだから。ねぇメンバー?」

桑&武「お、おう(汗)」

そんなライブならではのハプニングも挟みながら演奏された「そっけない」であったが、やっぱりテンポが速い。「そっけない」に関してはもう歌を聴くのを諦めて、メインステージの方に目を向けると武田のウッドベースや桑原彰 (Gt.) のメロウなギター、サポートドラマーである刄田綴色 (Dr.) 叩くクラッシュ・シンバルがエモーショナルな空気感を煽っていた。それだけに速めのテンポが気になって仕方がない。この楽曲に対して素っ気なくてどうするんですか。これ本当に何とかならないものですかね……。

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スタジアム公演に続いてスポイルされた「そっけない」には愕然としてしまったが、その後に演奏された「PAPARAZZI〜*この物語はフィクションです〜」ではドラスティックな演出に思わず目を奪われた。花道を歩きながら歌うフードを深く被った野田とそれに執念深く付き纏う何台ものカメラマン。野田は歌いながらも時にはカメラマンに攻撃的に食らい付き、時にはカメラのレンズを手で覆い逃げる素振りをする。実際にこういう世界が存在する事を我々は今一度考えなくてはいけないし、それを考える事はこの曲が発表された意義に繋がるはずだ。

洋「昨日は何食べたの武田たちは?」

武「俺は弁当を食べたよ」

桑「俺は太い牛タン。鰹の刺身とスナップエンドウ。俺ら昔行った居酒屋さん。懐かしの2006年くらい」

武「MACANA…?」

洋「仙台MACANAでやりましまね。仙台MACANAとか知ってますか?ライブハウス。昔、僕らそこでやってましたよ。そこのMACANAでやったライブに来た人っています?」

(スタンディングから男性の手が挙がる)

洋「本当!?マジか!?13年前?(笑)凄いね。ホント?その顔で13年前?お前まだ小2くらいじゃないの?今いくつ?」

洋「今19…?嘘つけよ13年前って(笑)嘘だろ?2006年だよ?ホント?6歳で来てたの?」

洋「7歳?あっ、親に連れられて?マジか凄え。7歳でMACANAで見てくれたんだ(笑)お父さんお母さんは今日来てない?あ、卒業されたって事ですね、RADWIMPSを(苦笑)皆さんは卒業しなくて良いからね?お互い歳をとって行きましょう」

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地方ならではのMCを終えた後はライブの定番曲である「おしゃかしゃま」や6年前のアルバム『×と○と罪と』から「DARMA GRAND PRIX」と「ブレス」が披露された。そして続けて演奏されたのはONE OK ROCKのTakaをゲストとして招いた「IKIJIBIKI」である。スタジアム公演に引き続きTakaのパートは同期で流され、RADWIMPSのみでの披露となった。『ANTI ANTI GENERATION』の収録曲をライブという音楽表現の場で昇華する為に必要な筋肉の使い方を彼ら自身が掴み切れていないとスタジアム公演を観て感じたのだが、そう感じた要因はこの楽曲であった。1ヶ月前は何処か探り探り演奏していた印象を受けたのだが、仙台公演ではアンサンブルに厚みが増し、この楽曲に内在したダイナミズムが存分に発揮されたパワフルな演奏を聴くことが出来た。Taka不在という穴は容易に埋められるものでは無いが、それを5人で埋めようとするRADWIMPSとサポートメンバーの“意地”が垣間見えた瞬間でもあった。

 「君と羊と青」では「ずんだずんだずんだずんだずんだずんだだ〜」「ずんだ 武田 ずんだ 武田 ずんだ 武田〜」と仙台のご当地グルメを絡めた遊び心のあるコールアンドレスポンスで会場を喜ばせた。(宮城1日目で武田のあだ名が“ずんだ”になった)

洋「石巻に金曜日で公開インタビューをさせて頂いて“何で毎年3.11に曲を作るんですか?”って言われて、僕も何でだろうって思うと、ただやっぱり作りたいからで。あの人に会いたいとか、夜ご飯にこれ食べたいとか、自然と湧き上がるように3.11に曲作りたいなって思って。それでもし1人でも誰かの心が2グラムでも軽くなるなら幸せな事だと思ってるので、これからも宜しくお願いします」

本編の最後を飾ったのは新海誠監督の長編アニメーション映画『天気の子』の主題歌「愛にできることはまだあるかい」。《愛の歌も歌われ尽くした / 数多の映画で語られ尽くした》愛の歌が歌われ尽くされ、愛が映画で語られ尽くした今日でも「愛」を歌い続ける事の大切さを野田洋次郎は誰よりも知っている。それはMCで野田が語った3.11に向けた楽曲制作の想いと通じるものが確かにある。だからこそこの曲の最後は「愛」に対する優しい肯定で締められる。「愛にできることはまだあるかい」という壮大な問い掛けが『天気の子』の世界線を越えて「愛」を歌い続ける事を決して諦めないRADWIMPSの信念に還っていく美しさがそこにはあるのだ。

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「アンコール何にしようかなってずっと後ろで話してたんだけど、あまりやってない曲を」という前置きから映画『君の名は。』の主題歌である「スパークル」のイントロが響き渡ると会場からは声が漏れた。そのドラマティックなサウンドにオーディエンスが酔い痴れた。そしていよいよクライマックス。「このツアーでまだ1回もやってない曲やってもいい!?分かるのかなあ?宮城の人、分かるのかなあ?分かってくれるかなあ?こういう曲なんだけど」と正拳突きの素ぶりをする野田。その素ぶりで察したファンからは早くも拍手が。「じゃあ俺らの最後の最後の“会心の一撃”を食らえや!!」そんな野田洋次郎の絶叫と共に「会心の一撃」の疾走感のあるイントロが飛び込んで来た。

圧倒的で感動的なフィナーレを前に僕は1ヶ月前に書いたRADWIMPSのライブレポを思い出していた。「バンドが過渡期の真っ只中であるが故に感じた不完全さは公演を重ねる毎に修復して行くに違いない」確かそんな事を書いたような気がする。バンドが過渡期である事は今も変わりない。だがそれ故に感じたあの“不完全さ”は殆ど無くなっていた。今回の仙台公演で野田が「やっと皆さんに (『天気の子』を) お届け出来て、気持ち的には一段階上がった状態でツアーを周ってる」と語っていた。その言葉通り、1ヶ月前にZOZOマリンスタジアムで観た時とは違う、何処か清々しい表情をしたRADWIMPSがそこにはいた。正直ツアー中盤戦でここまで凄まじいライブを観られるとは思っていなかった。来月に控えている追加公演であるツアーファイナルの横浜アリーナ公演ではこれ以上の何を見せられてしまうのだろう。今はそれが楽しみで仕方がない。(やまだ)

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RADWIMPS『ANTI ANTI GENERATION TOUR 2019』
2019.07.28 (Sun.)
Sekisui Heim Super Arena


SE. Anti Anti overture

1. tazuna
2. NEVER EVER ENDER
3. ギミギミック
4. カタルシスト

5. 万歳千唱
6. 謎謎
7. アイアンバイブル
8. I I U
9. そっけない
10. 洗脳
11. PAPARAZZI〜*この物語はフィクション…

12. おしゃかしゃま 
13. DARMA GRAND PRIX
14. ブレス

15. IKIJIBIKI
16. 君と羊と青
17. いいんですか?
18. 愛にできることはまだあるかい

〈encore〉
En.1  スパークル [original ver.]
En.2  会心の一撃