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  サザンオールスターズにとって前作「壮年JUMP」から約1年ぶりとなる新曲「愛はスローにちょっとずつ」が本日から配信リリースされた。またこの音源は8月下旬より発送されるサザンのアーティストブック「SOUTHERN ALL STARS YEAR BOOK『40』」にこの曲を収録されたCDでも聴くことが出来る。

  この「愛はスローにちょっとずつ」はツアーを回りながら楽曲を育てて熟成して行くという意味合いを持ってサザンが今年の3月末から6月まで開催していた全国ツアーで未発表の楽曲として演奏されて来た楽曲である。「未発表の曲 (「愛はスローにちょっとずつ」) をアリーナやドームクラスの会場でやるなんて、昔の自分だったら絶対にやらなかった」という桑田佳祐 (Vo.) のコメントからもこの楽曲がサザンの40年という長いキャリアに於いても如何にアバンギャルドな作品であるかが伺える。

  デビュー記念日に初のNHKホールで行われたキックオフライブを皮切りに、プレミアムアルバム『海のOh, Yeah!!』のリリース、13年ぶりの『ROCK IN JAPAN FES.2018』出演、平成最後の紅白歌合戦では日本音楽史に残る名演を見せるなど、記念すべき40周年イヤーを途轍もないスケール感で駆け抜けたサザンオールスターズであったが、そんな彼らから届けられた新曲は意外にもそんな“華やかさ”とは対照的な哀愁漂うスローテンポのバラッドであった。

  この楽曲を40周年ツアーで初めて耳にした時に“愛情の喪失”を歌った曲だと思った。それこそサビで歌われる《もう愛なんて要らないさ / ひとりで生きるんだ》という歌詞がシンボリックで、今はもう居ないその人に対する愛情が時と共に風化して行くリアルな現実を憂いているのだと。だがラジオ放送や配信された音源で繰り返しこの楽曲を聴いているとこの曲が“愛情の成熟”を歌っているようにも聴こえて来た。愛なんて要らないと繰り返しながらも、ふとした時に愛の面影を探している“俺”を見てしまう。愛の成熟に聴こえるのは曲の根底にあるのが愛情に対する諦観ではなく「温かさ」だからだと僕は思う。

  サザンオールスターズの40周年を祝うメモリアル・ツアーを通して何万人というリスナーからの愛情を享受して来た「愛はスローにちょっとずつ」。きっとこれからは多くのリスナーにそっと愛を届ける存在になって行くだろう。誰かの人生に寄り添うサザンのバラードは数多くあるが令和という時代にまた1つ「名バラード」が生まれてしまった。(やまだ)


(サザンオールスターズ「愛はスローにちょっとずつ」Music Video)