FullSizeRender

こんにちは、山田です。
本稿は僕の独断と偏見で今年のベストソング20曲をセレクトして感想を書くという毎年恒例企画の[2019年編]で御座います。正直に告白しますと、例年と比較して今年は良いと思った曲になかなか巡り合えず、更に追い討ちをかけるように自分が学生時代に聴いていたバンドが次々とメンバーの脱退や活動休止、解散の発表をし色々と喪失感を抱いてしまった1年でした。だからこそ本稿でセレクトした20曲は自分の中で本当に好きな曲たちばかりです。平成から令和へと時代が移り変わり、連綿と続いた2010年代の音楽シーンの最終決算でもある2019年。そんな2019年に発表された楽曲の中から珠玉の20曲をお届けします。これも毎年のように言ってますが便宜上、順位という物を付けておりますが正直関係ないです。全部1位です。今年もTwitterやブログで本当にお世話になりました。それでは皆さん、良いお年を。(やまだ)



20位  有頂天  / ポルカドットスティングレイ


今年のポルカドットスティングレイのアグレッシブな活動には本当に驚かされた。話題を呼んだ映画のタイアップや初となる日本武道館でのワンマンライブ、そして次から次へと発表される新曲の数々である。そんなポルカが2月6日にリリースした2ndフルアルバム『有頂天』のリードトラックとして収録された「有頂天」という楽曲なのだが、豊穣なバンドのモードが華やかなホーンセクションからも感じられる1曲だ。この曲でフロントマンの雫 (Vo.&Gt.) は《私は時代のマネキンさ / 流されて変わっていく私を見ていて》とクールに歌い上げる。激動する時代の波に抗うのではなく、ポルカはその波をプラスに変えるにはどうすれば良いのかと施策する戦略的なバンドである。2019年以上に来年はリスナーを有頂天にさせてくれるに違いない。


19位  いまは僕の目を見て  /  Base Ball Bear

Base Ball Bearがスリーピースバンドとなってから約3年という年月が経過したが、この3人でのアンサンブルもすっかり板に付いたようだ。今年の9月にリリースされた2nd EP『Grape』はそれを確信づける1枚であった。同期を排除してスリーピースという新体制を突き詰めた1st EP『ポラリス』も良かったのだが『Grape』は更にスリーピースのバンドサウンドを洗練させた味わい深い仕上がりになっている。バンドが3人体制となりギターが1枚減った事でどうしても指摘されていたギターサウンドの物足りなさを、3人なりの引き算の方法論でその課題を見事にクリアした瑞々しいバンドサウンドが心地良い「いまは僕の目を見て」。Base Ball Bearというスリーピースバンドの成熟をこの楽曲で存分に堪能して貰いたい。


18位  アゲイン  /  WANIMA

WANIMAが3月にリリースした4thシングル『Good Job!!』に収録された「アゲイン」はテレビドラマ『メゾン・ド・ポリス』のタイアップが付いた楽曲である。「あきらめたくない」という気持ちを歌ったという力強い歌詞はテレビドラマの世界ともリンクしているのだとか。3人のパワフルな演奏に乗せられるKENTA (Vo.&Ba.) のエモーショナルな歌詞が支持されるWANIMAだが「アゲイン」もまたそんな歌詞がダイレクトに響く楽曲であると思う。《誰かが台無しにした日も 誰もが大事に想う日も / 優しさだけじゃ癒えない 理屈や理由ならいらない / このままじゃ終わりたくないから》決してレトリックで誤魔化さないポジティブな言葉たちはこれ以上ない彼等からの“グッジョブ”なのである。


17位  powerful passion / どんぐりず




何年も前にYouTubeでマキシマム ザ ホルモンの「ぶっ生き返す!!」を弾き語りでカバーするカオスな2人組の動画を見た記憶はあったが、いつの間にか本格的な音楽活動にシフトしていたのは個人的に今年の大きな発見であった。群馬を拠点に「確かな信頼、安心の実績」を理念とし、音楽で世界を平和にする事を目指し活動しているという森とチョモランマという2人のユニット“どんぐりず”。芸人宛らのアー写、本気か冗談なのか分からないポリシー、カオスなMV、インタビューから滲み出る尖り具合。何から何まで規格外なユニットだが、そんな2人から出てくる音楽もまた独創的だ。ヒップホップやファンクなど音楽的要素を惜し気もなく詰め込んだ「powerful passion」は是非このMVと一緒に楽しんで頂きたいと思う。余計な言葉はいらない。最高です。


16位  夏の色  /  オワ吉


CDの破開封動画や自○騒動などYouTube界を少しだけ騒がせていたオワ吉の悪しきイメージを見事に払拭する1曲が3rdシングル『夏の色 / MASAKO』に収録されたこの「夏の色」である。だが僕はオワ吉がサザンオールスターズの楽曲を紹介をしたりしている6年前から彼の動画を視聴していたので、オワ吉のイメージは悪しき炎上商法より前に音楽が大好きな人という好意的な認識である。「もしも三ツ矢サイダーからCMタイアップの依頼が来たら」というイメージで制作したというこの曲。爽快なサイダー感ではなく、甘くほろ苦い炭酸に胸を締め付けられる夏の一コマをノスタルジックに歌い上げている。《若気の至りもいよいよ / 死にたくなる気を誘う》なんて歌詞は如何にもオワ吉らしいフレーズだ。


15位  J-POPは終わらない  / SASUKE


ポップミュージックの変遷の中でビートミュージックがここまでサウンドの主流となった時代がないという話を聞いた事があるが、近年ではそんな海外のトレンドに便乗し、日本の音楽シーンも変わりつつあると強く感じる(厳密に言えば日本のポピュラー音楽というのは70年代から洋楽の影響を強く受けているのだが)。そんなシーンだからこそ「J-POPは終わらない」は確かな必然性を持って届けられた。80〜90年代初期の邦楽ポップスが好きというトラックメイカーのSASUKEによって当時のポップスのキラキラが現代風にアップデートされている。そんな彼が2003年生まれの16歳(高校1年生)というのも驚きだ。《流行りのサイクル turn & turn 寝たら?》《J-POPキラキラ明るくしておくれよ / 劇的音楽進化退化する》《トレンド意識しないでfreeでいい 本当の自分の音で》年齢に拘るのは野暮だが16歳という若い才能がここまでストレートに歌ってくれるのは実に頼もしい。連綿と続くJ-POPの歴史の中でこの1曲が生まれたのは今年の大きなハイライトである。


14位  恋のメガラバ  /  コロナナモレモモ

言わずと知れたマキシマム ザ ホルモンの名曲「恋のメガラバ」がコロナナモレモモ(元・マキシマム ザ ホルモン2号店)のアレンジによって生まれ変わった。本店がハードコアなバンドサウンドを掻き鳴らしていた一方で、2号店にはDJが組み込まれていたり、シンセのサウンドや女性のコーラスなどで差別化を図り、それが決して不自然ではない新鮮な印象を与える。セキはん (Vo.) のボーカルも流石だ。もしかしたら2号店の方が口当たりが良いと好む人がいるかも知れない(ルックス面も本店にはない華がある)。ただこのバンドの存在自体が革新的ではあるが、このコロナナモレモモが評価されて売れて行った末に一体何があるのかという一抹の不安もある。


13位  HOUSE  /  Lucky Kilimanjaro
4ヶ月連続でシングルをリリースするという精力的な活動を見せた6人組のエレクトロ・ポップ・バンド、Lucky Kilimanjaro。「HOUSE」はその第2弾として7月にリリースされ、これまたLucky Kilimanjaroらしい緩い雰囲気に確かなメッセージ性を感じるナンバーに仕上がっている。《いわば部屋のプロフェッショナル / 泣く子も黙るインドア派 / 外では恥ずいけどここでは踊り放題 骨を埋める覚悟よインドアのマインドをここまで明るくポップスに昇華する手腕もさることながら《退勤→速攻帰宅 ためてた漫画にひたる / Spotify から LK NETFLIX でこもる / 時計の針が 12 まだまだ終わらないぜ / 家にいるなら何次会でも OK》と90年代を彷彿とさせるパーカッシブな四つ打ちのサウンドで“Spotify”や“Netflix”と言ったイマドキな名詞が歌われる楽しさもある。素晴らしい。


12位  五文銭  /  MOROHA


MOROHAが5月29日にリリースしたニューアルバム『MOROHA IV』のラストを飾った1曲。これまたMOROHAらしいリリックで殴られる壮絶な楽曲だ。彼等の音楽とはアフロ (MC) が己の細々とした弱さと隠しきれない嫉妬と果てしない孤独さに向き合った赤裸々で生々しい咆哮に傾聴していると、いつの間にか聴き手である自分の弱さと醜さも見透かされ抉られるようで正に諸刃の剣である。《いつかいつの日か自分のことを褒めてやりたい 良くやったって 最後まで逃げなかったって力一杯 抱きしめてらりたい / そして いつの日か いつの日か 俺は 俺のことを 俺は 俺のことを幸せにしたい》8分にも及ぶこの楽曲を締めるこのラインの歌詞は公式の特設サイトですら掲載はされていないが長々と綴られてきた「五文銭」の答えがここに収束している。彼等だけではなく誰もが最後は自分自身を幸せにしてあげたいのだ。


11位  プレイリスト  /  原田珠々華



2018年に惜しまれながらも解散をしたアイドルネッサンス。どうしてもアイドルネッサンスのメンバーであった石野理子が赤い公園のボーカリストとして活躍の幅を広げた事ばかりがフィーチャーされがちだが、アイドルネッサンスに途中から加入した現在17歳の原田珠々華もギターを片手にシンガーソングライターとしてソロ活動を始めた事も大きなトピックスである。今年の4月にリリースされた1stミニアルバム『はじめての青』に収録された「プレイリスト」は好きな人が聴いている音楽を聴いて想いを馳せる“僕”の気持ちをセンチメンタルに歌っている。それにしても《君の宇宙広くって 知らないことばかりだけど 一つずつ見つけていけたらな》好きな人の音楽趣向を「宇宙」と表現するのは言い得て妙である。《全くわからなくって流行にはのりたくなくて / 響かなかったあの曲もまるで僕のことを歌ってる》好きな人の事を少しでも理解したい一心で聴いていた音楽がいつの間にか自分自身のことを歌っているーー。プレイリストを通して“僕”と“君”の距離が縮まっていく様子をこの1曲から汲み取って頂きたい。


10位  だから僕は音楽を辞めた  /  ヨルシカ

ヨルシカにとって初のフルアルバムとなる『だから僕は音楽を辞めた』が4月10日にリリースされた。アルバムのリードトラックである「だから僕は音楽を辞めた」は一瞬その楽曲タイトルから「え、ヨルシカ終わるの?」と勘違いしてしまったが、あくまでフルアルバムのコンセプトが大前提としてあり、その中の登場人物に纏わるエピソードとして「だから僕は音楽を辞めた」というフレーズが存在しているのだ。僕はヨルシカの熱心なリスナーという訳ではないので歌詞の考察などは出来ないが、そんなライト層の僕でもグッと心を掴まれるような尖った言葉が散りばめられている。無論、そこにはこの楽曲を歌いながら泣いたというsuis (Vo.) の叙情的な歌唱も影響しているに違いない。因みにヨルシカは今作の続編である『エルマ』というアルバムを8月にリリースしている。今年に発表されたこの2枚のアルバムをセットで聴くと今作の味わいも変わって来る筈だ。


9位  愛はスローにちょっとずつ  /  サザンオールスターズ

2018年にデビュー40周年を迎えたサザンオールスターズ。昨年は企画盤『海のOh, Yeah!!』のリリースや13年ぶりの『ROCK IN JAPAN FES』への出演、平成最後の紅白歌合戦での最終歌唱などなど40周年のアニバーサリーイヤーに相応しい活動っぷりであった。そして今年、バンドにとって最大規模である6大ドームを含む全国ツアーで初披露されたのがこの新曲「愛はスローにちょっとずつ」だ。ツアーを回りながら楽曲を育てて熟成して行きたいという桑田佳祐 Vo.) の想いからライブで披露されてきたこの曲も、何万人というリスナーからの愛情をちょっとずつ育んで僕らの元に届いてくれた。そして今年はサザンオールスターズ及び各メンバーのソロ作品が一斉にサブスクリプションで解禁となった。勿論この曲もサブスクで聴く事ができる。サザンらしい口当たりが良くも切ないバラッドに酔い痴れる筈だ。


8位  マクガフィン  /  岡村靖幸さらにライムスター
今年の11月に配信された岡村靖幸とRHYMESTERの共同制作作品「マクガフィン」。“マクガフィン”とはサスペンスやスパイ映画で多用される用語という事でこの語彙センスは如何にも映画マニアの宇多丸らしく、リリックにもシリアスなスパイ映画を連想させる言葉が散りばめられスリリングな展開を見せている。Mummy-Dの独特なフロウなんかは流石としか言いようがない。凄すぎる。「マクガフィン」では全体的に岡村靖幸の歌唱が少ない印象を受けるのだが、“岡村ちゃん色”が全開のトラックと強烈なフックで岡村靖幸というシンガーが圧倒的な存在感を放っている。コードネームは“岡村靖幸さらにライムスター”。岡村靖幸とライムスターではなく、“岡村靖幸さらにライムスター”というのも頷けてしまう。


7位  Same Thing (feat.Superorganism)  /  星野源
昨年の12月にリリースされた『POP VIRUS』というアルバムで日本中に星野源のポップスを蔓延させた星野源だが、それだけに飽き足らず今年の星野源は海外に向けたアプローチに傾倒。星野源の全楽曲がサブスクリプションにて解禁、自身のライブ映像をNetflixで全世界に配信、星野源の公式Instagramアカウントの開設、上海・ニューヨーク・横浜・台北を廻るワールドツアー、そしてSuperorganismを招いて制作された新曲「Same Thing」。星野源にとって初のEPであり、初の全英詞となったこの楽曲だが、兎にも角にも本人たちが楽しんでいるのが存分に伝わる音像である。『POP VIRUS』を提げたドームツアーを終えて燃え尽き症候群のような状態に陥ってしまった事で一時は音楽を辞める事まで考えていた星野源が外発的な刺激で辿り着いた音楽の楽しさがこの楽曲には詰め込まれている。


6位  凛々爛々  /  赤い公園


赤い公園に新しいボーカリストとして元・アイドルネッサンスの石野理子 (Vo.) が加入してから早一年。待ちに待った『消えない-EP』が今年やっと僕らの元に届けられた。表題曲である「消えない」は2018年の私的ヒットチャートの記事を書いた時に未だ音源がリリースされていなかったのにも関わらず例外的に3位にランクインさせてしまったので、今年は同じEPに収録されている「凛々爛々」という1曲を。これまた新生・赤い公園をシンボリックに映し出した起爆剤のような楽曲である。疾走感のあるバンドサウンドと石野理子の凛とした歌声が身体中を気持ち良く駆け抜けていく。《めいっぱい羽を伸ばして 心を動かして凛々爛々》石野理子という新たな武器を携えた赤い公園、赤い公園という新たな自己表現のフィールドを手に入れた石野理子。4人による快進撃の狼煙はもう上がっている。


5位  言葉  /  ウカスカジー 


ウカスカジーが8月に配信リリースしたミニアルバム『金色 BITTER』に収録されている「言葉」はniko and…のテレビCMにも起用されているカントリー調でミディアムテンポの楽曲。これまでウカスカジーはライブでお客さんと盛り上がるというコンセプトを軸に楽曲制作を行ってきたがミニアルバム『金色 BITTER』では「明るく元気でハッピーな裏にあるほろ苦い部分、光と影、栄光と挫折」を歌うというウカスカジーの新たな一面をチラつかせている。《この世で一番大事なものってさ / きっと大きなハートと探究心》一番大事なものと言いながら2つあるんかい!と初めて聴いた時はツッコミを入れてしまったが桜井和寿 (Vo.) にとって探究心というのは音楽制作に於ける根源のような存在だと僕は勝手に思っている。そして彼は人生の栄光も挫折も包み隠さず言語化してきたミュージシャンであり、それはヒップホップで名を馳せるGAKU-MCにも共通する。この2人が紡いだそんな言葉だから一聴の価値があるのだ。


4位  愛にできることはまだあるかい  /  RADWIMPS

2019年で最大のヒット作となった新海誠監督の最新作『天気の子』だが、そのヒットの要因にやはり音楽を担当したRADWIMPSの存在は看過できないだろう。映画『天気の子』の公開と併せて発売したサントラアルバム『天気の子』に収録されている「愛にできることはまだあるかい」。この曲は2年前に新海監督から『天気の子』の脚本を受け取った野田洋次郎 (Vo.&Pf.) が最初に制作した作品であり、野田がこの作品に対して抱いたファーストインプレッションが凝縮された楽曲と言っても過言ではない。映画『天気の子』は東京を舞台にしたカタストロフィーに巻き込まれ、期せずして世界の運命を背負った主人公の帆高とヒロインの陽菜の物語。劇中で無我夢中に奔走する登場人物たちの想いと音楽制作に対する野田の矜持が世界線を超えてオーバーラップして《愛にできることはまだあるかい》というフレーズに自然に繋がっていく。この曲はそういう曲だ。


3位  Girl2  /  神聖かまってちゃん


神聖かまってちゃんのパブリックイメージを一新するであろう新曲「Girl2」を皆さんはお聴きになったであろうか。神聖かまってちゃんが2020年にリリースするアルバム『児童カルテ』に収録される1曲だが、今年の11月にアルバム全曲が先行配信されたのでこれは今年のランキングにぶち込んでおこう。タイトルはBlurの「Song 2」のパロディであり、サウンドとしては神聖かまってちゃんらしい打ち込みの電子音楽にの子 (Vo.) の英詞のラップが乗ったダンスミュージックのような仕上がりだが、Dash Berlinの「Never Cry Again」をサンプリングして挿入するセンスは実に洒落ている。また“女の子の抱える闇が混沌としている場所”としてピンクの照明が妖しいトイレのセットで撮影されたMusic Videoもこの楽曲のカオスな世界観を具現化している。学校のトイレというのはの子にとっては決して良い思い出のある場所ではないだろうが、そんな過去を背負ったの子じゃないとMusic Videoであんな表情は出来ない。


2位  Stand Out Fit In  /  ONE OK ROCK

ONE OK ROCKというバンドは本当に器用なバンドだと思う。日本の音楽市場と海外の音楽市場という規模も趣向も異なる両方のマーケットを意識したプランニングをして尚且つそれが普通に成功しているからである(現在の彼らは後者に傾倒しているだろうが)。そして2月にリリースされたアルバム『Eye of the Storm』のリードトラックとして収録された「Stand Out Fit In」には大感激してしまった。かつてはエモを主体としたオーソドックスなバンドサウンドを鳴らしていた彼らからは想像できないEDM寄りのサウンドで好き嫌いは分かれるだろうが、そんなバイアスも振り切ってしまう気概がこの楽曲には込められていると思う。タイトルの意味は“はみだして なじめ”。この姿勢は海外に重きを置いて活動している現在のONE OK ROCKそのものだ。海外へのアプローチで劇的に変わり続けるバンドの姿勢に苦言を呈するリスナーも少なくないが、はみだしてなじもうとする彼らを僕は素直に応援したいと思う。


1位  新世界  /  BUMP OF CHICKEN


今年にリリースされた楽曲で最も僕が聴いた曲は結局これなのではないかという客観的な事実も交えまして、1位はBUMP OF CHICKENの「新世界」とさせて頂きます。BUMPにとって約3年5ヶ月ぶりのニューアルバム『aurora arc』に収録されたこの楽曲。楽曲中に散りばめられた紙鉄砲や靴の音のサンプリングも印象的だが、何と言っても「新世界」で繰り返し歌われる《ベイビーアイラブユーだぜ》というパワーワードが凄い。僕が流行語大賞の選考委員だったら確実に今年の大賞にしてた。なんせあの藤原基央 (Vo.&Gt.) が《ベイビーアイラブユーだぜ》と歌っているのだから。これまで数多のミュージシャンによって歌い尽くされてきた「アイラブユー」という常套句だが《ベイビーアイラブユーだぜ》はより親密で、身近で、カジュアルで、照れで、誇らしく、新しい。そんなフレーズを引用せずに歌詞中には登場しない“新世界”という単語をタイトルにしたのも見事だ。《君と会った時 / 僕の今日までが意味を貰ったよ》君と出会うまでの自分の人生への肯定と、君との出会いで目の前に切り開かれた新世界への祝福。ボーイミーツガールに於ける歓びも、愛しさも、尊さも、感動も「ベイビーアイラブユーだぜ」という一文に全て詰め込まれているのだろう。