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Mr.Childrenのストーリーに確かな必然性を持って誕生した新曲「Birthday」
  

  Mr.Childrenにとって19枚目のオリジナルアルバムである『重力と呼吸』がリリースされてから、早2年という年月が経とうとしている。この『重力と呼吸』というアルバムがかつて無いほどにロックバンドとしての気概が充溢し、かつダイナミズムなサウンドが印象的なロックアルバムに仕上がっており、このバンドのストーリーに新しい息吹をもたらしたことは記憶に新しい。それはミスチル現象の黎明期から彼らと制作を共にしてきたプロデューサー・小林武史の元を離れて完全にセルフプロデュースに移行した4人だからこそ拓けた新境地であった。

  そしてMr.Childrenが今月にリリースした両A面のニューシングル『Birthday / 君と重ねたモノローグ』はアルバム『重力と呼吸』で培ったシンプルかつストレートなバンドサウンドの余韻を確かに感じさせながら、サウンドとしては更に洗練されたものになっている。この2曲のレコーディングがロンドンで行われ、NYでマスタリングされたというのも看過する事のできない重要なファクターである。冒頭から鈴木英哉 (Dr.) のバスドラムがまるで心臓の鼓動のように一定のリズムを刻み、それに呼応するように桜井和寿 (Vo.&Gt.) が奏でるアコースティックギターの力強いストロークと歌声がストリングスと合流して訴求力を増していく「Birthday」。7分半という長尺でありながらも2分近いアウトロで構成されてるスローテンポのバラード「君と重ねたモノローグ」。この2曲は近日公開が予定されている『映画ドラえもん のび太の新恐竜』の主題歌として書き下ろされた。「君と重ねた…」の2分近いアウトロも劇中で流れることを意識したのか映画音楽への接近を感じさせる。

  Mr.Childrenが自身のことを“ポップをやっていく恐竜”と謳ったのはもう20年前の事だ。当時にリリースされたベスト盤のジャケットにはそんな恐竜に最も近いサイが起用されている。現在では否定的な意見が多いが、一昔前までは“恐竜を滅ぼしたのは花の誕生”という仮説が囁かれていた。そんな仮説を愚直だが鵜呑みにするならばMr.Childrenという恐竜はそんな“花”でさえも取り込んで進化し続けた恐竜である。平成から令和へ時代が移行しても自分たちの可能性を模索していく挑戦的な姿勢は現在も変わらない。

  そんなMr.Childrenだが『重力と呼吸』を提げた昨年のツアーで桜井が初めて明確にこのバンドの余生について吐露していた。「この令和という時代にあと1曲でいいから、この5万人が心をひとつに出来るような曲を作りたいなと。いや、1曲は謙虚すぎました。あと少なくとも10曲」。新曲「Birthday」はそんな10曲のうちの貴重な1曲に、第一歩になったように思える。軽率だろうか。いや、軽率と言われようが讃えながらこの曲の誕生を今日は祝いたい(やまだ)


(Mr.Children「Birthday / 君と重ねたモノローグ」15秒SPOT)