斬新なストーリー
RADWIMPSの音楽
が挙げられると思います。これらが見事なバランスで幸福な関係を保ってるからこそ『君の名は。』という名作が生まれたのではないでしょうか。それに最近は空前の青春恋愛映画ブーム。高校生を主人公にした恋愛映画が頻繁に公開されその度に話題を呼んでますよね。『君の名は。』も少なからずその流行の後押しを受けたといってもいいと思います。かなり遠回しになってしまいましたがいよいよRADWIMPSの方に焦点をズラしていきましょう。
「RADWIMPS」と「映画」
新海誠とRADWIMPSという偶然のようで必然のようなこのタッグ。新海監督が前々からRADWIMPSのファンであった事から話が進んでいくのですがそこの詳しい経緯はWikipedia等でご確認ください。そもそもRADWIMPS自身、タイアップが少なく映画音楽とは無縁な気もしますが意外とそうでもありません。
RADWIMPSと映画の関係は2013年にまで遡ります。1作目は映像作家の島田大介さんが監督を務めた短編映画『ただいま。』主演は小松菜奈さん。主題歌には「ブリキ」という曲が起用されました。
2作目は2015年に公開された野田洋次郎さんが映画初主演を務めた松永大司さん監督の映画『トイレのピエタ』。映画主題歌もRADWIMPSが書き下ろし「ピクニック」が起用されました。
3作目は朝倉加葉子さん監督のドキュメンタリー映画『RADWIMPSのHESONOO』。2015年のRADWIMPSに密着したドキュメンタリー映画だったのですが、この頃すでに『君の名は。』の音楽制作をしてたのにも関わらずそこに一切触れていないのは「上手く隠したなあ」と今になって感心しています。というわけでこの『君の名は。』はRADWIMPSにとって映画と関わる4作目となる訳です。
RADWIMPS サウンドトラックアルバム『君の名は。』をご紹介
2016年8月24日にRADWIMPS初のサウンドトラックアルバム『君の名は。』がリリースされました。今作でRADWIMPSはアルバムで初めてオリコン首位を 獲得(2週連続)。 少々値も張る初回限定盤が品薄になるという事態まで発生するほどでした。またiTunes週間アルバムチャートでは3週連続1位を獲得、iTunes週間ソングランキングでは1位から4位までをRADWIMPSが独占するという異例の事態まで起こりました。
映画『君の名は。』の音楽で最大の特徴は、劇中で流れる音楽の殆どをRADWIMPSが手がけているという事です。それに主題歌が4曲あるというのも前代未聞ですよね。僕も初めて知った時は理解できませんでした(笑)では収録曲を見てみましょう。
収録曲
01. 夢灯籠
02. 三葉の通学
03. 糸守高校
04. はじめての、東京
05. 憧れカフェ
06. 奥寺先輩のテーマ
07. ふたりの異変
08. 前前前世(movie ver.)
09. 御神体
10. デート
11. 秋祭り
12. 記憶を呼び起こす瀧
13. 飛騨探訪
14. 消えた町
15. 図書館
16. 旅館の夜
17. 御神体へ再び
18. 口噛み酒トリップ
19. 作戦会議
20. 町長説得
21. 三葉のテーマ
22. 見えないふたり
23. かたわれ時
24. スパークル(movie ver.)
25. デート2
26. なんでもないや(movie edit.)
27. なんでもないや(movie ver.)
改めてみても27曲というボリュームは凄いです。22曲はインストゥルメンタルで、5曲は歌モノとなっています。また今作で初めてギターの桑原彰さん、ベースの武田祐介さんが作曲した楽曲が収録されるというのもこれまでになかった事です(厳密には過去に1曲だけ桑原彰作詞作曲の楽曲が存在する)。野田洋次郎さん曰く「映画に100%寄り添った音楽」ということでこれらの楽曲達が映画の場面場面で大きな意味を持つことになります。
僕の知識の幅が狭いだけかも知れませんが、主題歌が4曲というアニメ映画を今まで観たことがないです。多くても挿入歌ありの2曲程度。この主題歌4曲が大変人気でiTunesのランキングから未だに消えません。恐るべし。何故これほどまでに評価されるのでしょうか。主題歌1曲1曲を個人的な観点から紐解いていきます。
夢灯籠 (作詞/作曲 野田洋次郎)
映画のオープニングを飾るこの楽曲。
この曲から一気にお客さんは映画の世界に惹き込まれていくのです。歌い始めのブレスは監督からの要望らしくそこを意識して聴くと何か凄いことが始まる前兆を感じます。楽曲全体としては疾走感溢れる曲で2分12秒とかなりコンパクトに収まっています。因みにRADWIMPSで一番短い歌モノの楽曲となりました。 映画でのオープニング映像も素晴らしく、あの2分間に物語で最大のどんでん返しとなる鍵が隠されているのですが……。
この「夢灯籠」ですがアルバムで収録されているバージョンと映画で使われてるバージョンは少しだけ違います。大きな違いは1つ。アウトロの有無です。
映画ではアウトロがなく「君の名を 今追いかけるよ」というフレーズで突如、曲は終わります。それに対しアルバムではアウトロが追加されています。
さて、RADWIMPSが楽曲を発表する度にファンが好き勝手行うタイトルの解釈に参りましょう。「夢灯籠」とは勿論造語であり「夢」+「灯籠」がセットになってるんですね。楽曲タイトルが発表された時に一番心惹かれたタイトルでした。
「夢」とは『君の名は。』を見る上で欠かせないキーワードです。では「灯籠」とは?映画で特に灯籠に関するエピソードはありません。ただヒロインの宮水三葉は妹とともに宮水神社の巫女を務めているので神社と灯籠の繋がりは自然なのかも知れません。そもそも灯籠にはどういった意味合いがあるのでしょうか。灯籠流しという行事がありますがあれには死者の魂を弔って灯籠やお盆の供え物を海や川に流すという意味合いがあるみたいです。映画をご覧になった方はここで何か気づくのではないでしょうか。個人的には三葉の境遇が重なって見えましたがとりあえずここまでにしておきます。
前前前世 (movie ver.)
(作詞/作曲 野田洋次郎)
この『君の名は。』で一番のリード曲となったこの楽曲。4月に初公開された時からネットでの反響が凄くYouTubeにアップされたミュージックビデオは4600万回以上再生され、今年屈指のヒット曲となりました。また映画公開の26日にRADWIMPSがメジャーデビュー11周年目にしてテレビ朝日系列の『music station』にて地上波初登場を果たしこの曲を演奏したことで一気にその人気は急上昇しました。
何度聴いてもテンション上がりますね。過去の楽曲を挙げるのなら「会心の一撃」や「君と羊と青」に似たものを感じる方も多いのではないでしょうか。
"君の前前前世から僕は君を探し始めたよ"などと言った印象的な歌詞はまんま『君の名は。』のことなのです。この曲に限った事ではありません。『君の名は。』を鑑賞した後で主題歌を聴くと「まんまやん」という小並感溢れる感想しか出てこないのです。それほど映画に寄り添って作られた楽曲なのです。
実はタイトルに"movie ver."と書かれているものの映画で使用されているのはまた違うアレンジのものなのです。「は?」と思われる方々も多かったと思います。映画では2番のAメロが変更され間奏以降が全てカットされています。これには最初に渡していた「前前前世」が映画で使われる予定でしたが、後日監督から「映画の尺と情景に合わせて足して欲しい」という要望を受け、急遽作ったブロックがあり「前前前世(movie ver.)」というものがありながらさらに新しく録り直したという裏事情があるわけです。その新たに録り直したものは今回のサウンドトラックには収録されませんでしたが11月23日リリース予定のRADWIMPSのニューアルバムに収録されるらしいです。その名も「前前前世(original ver.)」ラジオ等では既に解禁され反響を呼んでます。
ここで追加された歌詞をご紹介。
私たち越えれるかな
この先の未来数え切れぬ困難を
言ったろう二人なら
笑って返り討ちにきっとできるさ
君以外の武器は他にはいらないんだ
いかがでしょうか。素敵な歌詞ですよね。野田洋次郎さん曰くスラスラ出てきたそうです。よくよく見ると三葉と瀧の会話とも読み取れる歌詞。これまで一人称が「僕」のみであったのにも関わらずここで急に「私」という別の人物が混入しているのです。三葉と捉えるのが無難な気がします。ずっと瀧の視点で描かれていたので、ここで三葉がちょろっと顔を覗かせるのはかなり貴重かもしれませんね。
映画を観た人の感想で多いのが「前前前世」が入るタイミングが絶妙だったという意見。全くもって同感です。あの場面は何よりも楽曲が主人公でした。あの場面、実は神木さんや上白石さんがアフレコで頑張って声を入れたのにも関わらず新海監督がそれらを全てカットして楽曲が際立つように映像も編集したといいます。映像と音楽を並行して制作するという斬新な現場だからこそ創り出せたあの一体感。素晴らしいの一言に尽きます。
この「前前前世(movie ver.)」RADWIMPSの代表曲への階段を一気に上りました。RADWIMPS本人にとってもファンにとっても、そして映画にとっても大切な楽曲になったと思います。
スパークル (movie ver.)
(作詞/作曲 野田洋次郎)
「夢灯籠」と「前前前世」が物語の前半を盛り上げる楽曲ならこの「スパークル(movie ver.)」と「なんでもないや(movie edit.)&(movie ver.)」は物語の後半をしっとりと包み込む役割を果たしています。
RADWIMPSが新海監督に最初に渡した楽曲が「前前前世(movie ver.)」とこの「スパークル」で、特に「スパークル」の一節"美しくもがくよ"という歌詞はかなり監督の中で大きく響いたらしく、この歌詞から映画のイメージを広げていったそうです。この楽曲が流れた場面は映画の最高潮といっても過言ではないシーンで涙無しでは見れない場面に更にRADWIMPSが曲を添えてくれているので涙腺崩壊です。間奏がかなり長く作られていて曲全体としては9分近い大作となっています。間奏が非常に長く壮大なストリングが奏でられスケールの大きさを音楽からも感じることができます。映画と音楽が秒単位で調整され見事な化学反応を起こし、タイトル通り閃光のような輝きを魅せてくれるのです。
この「スパークル(movie ver.)」も同様に別のアレンジで作成された「スパークル(original ver.)」が存在し来月発売予定のRADWIMPSのアルバムに収録予定です。こちらも先日ラジオで解禁されました。
是非、お聴き下さい。
なんでもないや (movie ver.)
(作詞/作曲 野田洋次郎)
劇中の最後のシーンで「なんでもないや (movie edit.)」が流れ「なんでもないや(movie ver.)」は『君の名は。』のエンディングを飾ります。スタッフロールと共に流れるこの楽曲は映画の余韻を一層高めてくれました。宮水三葉の声を担当した上白石萌歌さんが歌手デビューしファーストアルバムで、この「なんでもないや(movie ver.)」をカバーしたことは記憶に新しいですね。
この曲はついに野田洋次郎の本領発揮と言えるほど深みのある楽曲です(勿論他の楽曲にも深みはあるのですが!)本領発揮と言いますのは歌詞の話で、野田洋次郎さん特有の言葉遊びが存分に発揮された曲だと思います。その深すぎる歌詞に恐る恐る足を踏み入れてみようと思います。(個人的な解釈なのでただのファンの一意見として捉えて下さい)
最初の歌い出し。2人とは言うまでもなく瀧と三葉のことを指しています。僕が思うにここの歌い出しの歌詞がかなりのキーセンテンス。ここ2人の心情としましては決して楽しい感じではないですよね。僕はここから果てしない虚無感、喪失感を感じました。泣いた後の空がやけに透き通って見えたのも胸に詰まってた何かが晴れてしまったんだと思います。それも意図的に晴らしたのではなく本人の意思とは反して消えてしまったのかもしれません。
Aメロの歌詞に「いつも尖ってた父の言葉が今日は温かく感じました」という歌詞があります。いきなり咀嚼しにくいものが来ましたね。三葉の父親は糸守の町長で劇中でも厳格な父親像が印象的です。「いつも尖ってた父の言葉=宮水パパ」ということでよろしいでしょうか。ですが宮水パパが劇中で温かい言葉をかけたシーンなどありませんでした。この疑問にぶつかった時自然に出てきて考察が「別の父親」の存在でした。勿論、三葉の父親は町長のみですが三葉は瀧の身体を経由してもう1人の父親と接触しているのです。そうです、瀧の父親です。劇中ではあまり触れられていませんが瀧の代わりに朝ごはんを作るなど悪い印象は一切ありません。いつもは娘に厳しい父親ばかりだった三葉は瀧と入れ替わってる時、少し温かい父親を感じたのかもしれませんね。「父親」の下りだけでこんなに行数使って気が遠くなりそうですがもう少しだけお付き合いください。
Bメロは「もう少しだけでいい」というフレーズを繰り返すので頭に残りやすいですよね。ここでは時間制限ありの2人の出会いが描かれています。映画を見た方は察することができると思いますが、かたわれ時を迎えた三葉と瀧がこの歌詞で描かれているのです。"もう少しだけ"を繰り返す事によってこの時間を大切にしたいという主人公の切なる思いが読み取れます。
造語が印象的なサビに入ります。
"タイムフライヤー"など普段聞きなれない単語が出てきます。これは野田洋次郎さんの造語であり直訳すると「時を超える人」決しておかしくないですよね。正にこの瞬間、三葉と瀧は時間を超越しているのです。"時のかくれんぼ はぐれっこはもういやなんだ"という歌詞は2人の間に生じた時差を恨んでいるかのよう……。サビの後半はこれまた面白い言葉遊びに入ります。
嬉しくて泣くのは 悲しくて笑うのは
君の心が君を追い越したんだよ
往年のRADWIMPSファンなら思わず既視感に駆られてしまう野田節です。
2006年にリリースされた「有心論」では
君があまりにも綺麗に泣くから
僕は思わず横で笑ったよ
すると君もつられて笑うから
僕は嬉しくて泣く 泣く
2009年に発表された「謎謎」では
悲しい時は無理して笑ってみせるのに
嬉しい時は涙を流すものはなんだ
結論から言うと嬉しい時に涙して、悲しい時に笑わせたがるのは野田洋次郎あるあるなんです(笑)このフレーズを映画で聴いた時、新しさで溢れる『君の名は。』の中にも懐かしさを感じる事ができて少し安心しました。
いつもは喋らないあの子に今日は
放課後「また明日」と声をかけた
慣れないことも たまにならいいね
特にあなたが隣にいたら
2番のAメロです。ここの歌詞は急に現実味を帯びてる気がしました。彗星墜落というあまりにスケールの大きなストーリーだったので主人公が学生ということをついつい忘れてしまうんですね。この歌詞で急に現実に引き戻されました。
そして気になるのは今まで「君」と呼んでいた相手をここで「あなた」と呼んでいる事です。前述した1番のAメロの歌詞(父親のくだり)とここの歌詞は様々な解釈ができるかと思います。皆さんの解釈を是非お聞かせください(笑)
僕らタイムフライヤー
君を知っていたんだ
僕が僕の名前を覚えるより ずっと前に
上記は2番のサビですがこれもさらりとは聴き逃せない歌詞です。このまま解釈するなら「僕は物心付く前から君の事を知っていたよ」ともとれるわけです。『君の名は。』の劇中にそんなホラーな場面はありませんからこれは「前前前世」にも繋がる表現なのでしょうか。三葉と瀧の間に時間のズレがあったように、ここにも一筋縄では解決できないズレがあるわけです。
君のいない世界にも
何かの意味はきっとあって
でも君のいない世界など
夏休みのない八月のよう
君のいない世界など
笑うことないサンタのよう
君のいない世界など
メロディが転調して「なんでもないや(movie ver.)」もいよいよ佳境を迎えます。何度読んでも素敵な比喩。そんな素敵な比喩はとりあえず置いておいて注目する点は最後の最後です。転調後、君の存在価値を八月に例えたり、サンタに例えたりしたりして恐らくまだまだその比喩は出てくるのに最後にピタリと止まってしまうのです。実際、歌を聴いてみますと「君のいない世界などぉぉぉぉ うぉぉぉぉぉぉぉぉ」と野田洋次郎さんが声を張り上げてます。その叫びは嘆きにも聴こえます。何があったのでしょうか。
恐らくかたわれ時が終わってしまったのだと思います。かたわれ時が終わるとお互いの記憶は薄れ、いずれ忘れてしまう。忘れまいと2人は別々になった後もお互いの名前を何度も何度も呼びます。
瀧「三葉…三葉…覚えてる!君の名前は三葉!三葉!三葉!」
三葉「瀧くん…瀧くん…!瀧くん…!」
ここまでお互いの名前を連呼するアニメもなかなかないでしょう。『君の名は。』というタイトルだけにこの作品における「名前」の存在価値は絶大です。
こうしてお互いの名前を呼んで忘れないようにしてましたが無情にも2人はお互いの名前を思い出せなくなってしまうのです。特に瀧の方は唐突で「三葉」と叫んでいた数秒後には頭が空っぽになり「お前は……誰だ……」状態です。
「君のいない世界など……」で急に歌詞が切れてしまうこの境遇と上記の瀧の境遇から似たものを感じませんか?
最後のサビにいよいよこの曲のタイトル「なんでもないや」が登場します。
なんでもないや
やっぱりなんでもないや
今から行くよ
そもそもこの「なんでもないや」とは誰が誰に向けて発言しているのでしょうか。 ここが咀嚼し辛い部分です。「なんでもないや」の後に「今から行くよ」というフレーズもありリスナーからしたら「どこに?」となってしまいます。一つ確かなことはこの時点で曲の主人公が何かを忘れているという事です。実際、かたわれ時が終了しあんなに想っていた三葉の事も忘れてしまい彗星墜落から8年後、瀧は「なんでもなかった」かのように就活に励んでいます。瀧が8年前の自分がなぜか糸守に興味を持っていたことについて客観的に自己分析をしていますがそこのシーンで流れてるのが「なんでもないや(movie edit.)」です。そこの巡り合わせも意図的なのかもしれません。
結局「なんでもないや」とは記憶が欠如して思い出そうにも思い出せない蟠りから生まれた開き直りだと僕は受け取りました。前前前世から君を探してたはずの主人公が急に「なんでもないや」と捨て台詞を吐くとは思えません。その過程で主人公は大切なものを忘れてしまっているのです。「今から行くよ」は大切なものが欠如しつつも自分を奮い立たせるための自己暗示のようにも感じます。
そうやって切り開いた未来でついに三葉と瀧は何度目かの再会を果たします。最後のシーンで三葉が流した嬉し涙に僕も思わず貰い泣き。最後のセリフの直後に「なんでもないや(movie ver.)」が流れ本編は終了、スタッフロールが流れます。この曲が本当に美しい余韻を残して行くのです。
「夢灯籠」「前前前世(movie ver.)」「スパークル(movie ver.)」「なんでもないや(movie ver.)」という4曲の主題歌がそれぞれの場面で『君の名は。』を支えているのです。歌詞が主人公の内面を代弁してると言っても過言ではありません。それぞれの楽曲が各場面で最大限に映画を盛り上げ、それに応じで圧巻の映像美が音楽を盛り上げる。そんな相乗効果を見せつけられました。
インストゥルメンタルについて
これだけ濃度の高い歌モノ4曲がありつつもそれだけでは収まらないのがこのサウンドトラックアルバム『君の名は。』です。 歌モノを際立たせる為に、そして映画のワンシーンに彩りを加えるためのインストゥルメンタル楽曲の素晴らしさも忘れてはいけません。
インストゥルメンタル楽曲では映画音楽ということを本当に強く意識してる印象を受けます。殆どの楽曲はピアノやストリングスが基調とされていてバンドサウンドからまた一つ飛躍した気がします。野田洋次郎さんは普段はしないストリングスでの音楽表現が良い体験になったと話していらっしゃいました。
「憧れカフェ」「ふたりの異変」は桑原彰さんによる作曲です。 田舎暮らしの三葉のカフェデビューや瀧と三葉が自分自身の身体に起こっている異変に気づくシーンなど『君の名は。』の中でもかなりほんわかしているシーンなので曲調も自然と明るいものになっていますよね。
「消えた町」「図書館」「町長説得」は武田祐介さんによる作曲です。桑原彰さんが担当した場面と武田さんが担当した場面のテンションの差ですよ(笑)武田さんの方はかなり登場人物も映画を見ている方も神経質になっているシーンです。そんなシーンですから曲もかなり陰湿なものとなっています。武田さんの作曲はかなり沢山の音が注ぎ込まれている印象です。よくよく聴いてみて下さい。
RADWIMPSサウンドトラックアルバム『君の名は。』とは何だったのか
長々と綴ってきましたが総括です。
アニメ映画の音楽制作にロックバンドが1年半もかけるという時間と労力が注ぎ込まれたサウンドトラックアルバム『君の名は。』ロックバンドが映画音楽に新たな風を吹かせたと言ってもいいのではないでしょうか。音楽と映像を同時進行で製作していく中でRADWIMPSと新海監督が協力して、喧嘩して、支え合ってその繰り返しで生まれる相乗作用が『君の名は。』を進化させ現在の大ヒットがあるのだと思います。映画とロックバンドが育んだ幸福な関係。映画『君の名は。』の世界観がこの1枚に詰まっています。是非、映画とセットでお楽しみ下さい。このアルバムも通過点に過ぎないのです。これは「アルバムを出してツアーをする」という単純なサイクルに嫌気がさしていた野田洋次郎さんに舞い込んできたRADWIMPSの新たな挑戦でした。話を受けた当時はまさかドラムの山口智史さんが無期限活動停止をするなんて思ってもなかったでしょうからそれが唯一の誤算だったかもしれません。しかしそんな壁も乗り越えRADWIMPSはより名を轟かせ勢いを緩めません。その勢いは止まらずRADWIMPSは来月の23日にニューアルバムを発売します。そこには何が詰まっているのでしょうか。何が聴けるのでしょうか。今後のRADWIMPSから目が離せません。(やまだ)
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