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こんにちは、山田です。
本稿は僕の独断と偏見で今年のベストソングをセレクトして感想を書くという毎年恒例企画の[2020編]で御座います。そしてこれも毎年のように言ってますが便宜上、順位という物を付けておりますが正直関係ないです。気持ちとしては全部1位です。最後に謝らなければなれない事が2点ほどあります。まずヒットチャートを組む際に毎年20曲セレクトしてましたが、今年は半分の10曲にしております。例年以上に2020年の音楽シーンに向けてアンテナを張れなかった事が原因です。後は本来ならば2020年内に投稿すべきこのブログのアップが2021年の2月にズレ込んでしまった事です。本来なら昨年に投稿する事を想定して執筆していた為、本稿での「今年」は2020年が基準になっております。ご不便をお掛けしますが色々あった2020年の総括として本稿を宜しくお願いします。(やまだ)

 
10位  豆柴の大群 -お送りするのは人生劇場- / 豆柴の大群
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スタート
スタート
2020-06-03


TBS系『水曜日のダウンタウン』の一企画から昨年に結成されたアイドルグループ“豆柴の大群”。安田大サーカスのクロちゃんがプロデュース(現在はアドバイザー)そして作詞作曲を務めた事でも話題となった。今作「豆柴の大群 -お送りするのは人生劇場-」は今年の6月にリリースされた1stアルバム『スタート』の冒頭を飾るリード曲。彼女達の名付け親であるクロちゃんが“豆柴の大群”というグループ名を番組内で発表した時はメンバーも含め視聴者も戸惑っている印象を受けたが“豆柴の大群”が“豆柴の大群”である事を真っ向から受け入れ、熾烈なアイドル界を生き抜いていくという覚悟がこの1曲から充溢している。
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9位  LUCK / Nulbarich

LUCK
2020-07-01


シンガーソングライターのJQがトータルプロデュースを務めるNulbarichが今年の7月にデジタルリリースした今作「LUCK」はメルセデス・ベンツのCMの為に制作された80年代テイストのディスコミュージックである。特徴的なボーカルエフェクトに一定のリズムを刻むビート、そして煌びやかなシンセサイザーには彼の有名なa-haの「Take On Me」を彷彿とさせられてしまう。80年代のシティ・ポップの再評価や韓国での“ニュートロ”(New + Retro の造語)という新しいジャンルの流行など、近年の音楽シーンの潮流に近いものを80年代の空気感を現代にアップデートさせたスタイリッシュな「LUCK」からも感じ取れる。

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8位  悲しきプロボウラー / 桑田佳祐 & The Pin Boys
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悲しきプロボウラー [CD] (通常盤)
桑田佳祐 & The Pin Boys
2020-02-12


今作「悲しいプロボウラー」はサザンオールスターズの桑田佳祐が主催するボウリング大会『KUWATA CUP 2020』のテーマソングとして書き下ろされたが今年はコロナウィルスの感染拡大の影響で開催自体が中止になってしまい、皮肉にもタイトル通り“悲しきプロボウラー”状態になってしまった。桑田佳祐 & The Pin Boys名義でリリースされた前作「レッツゴーボウリング」は桑田佳祐が敬愛する伝説のプロボウラーの名前を羅列した斬新な歌詞でボウリング愛をダイレクトに表現していたが、今回の「悲しきプロボウラー」はボウリングを通して夢を歌い、恋愛を歌い、人生を歌っている。ボウリングだけに留まらない桑田なりのほろ苦い人生賛歌でもあるのだ。
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7位  怪獣の花唄 / Vaundyㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

strobo
Vaundy
2020-05-27


作詞作曲は勿論、楽曲のアレンジやアートワークのデザイン、そして映像まで全てをセルフプロデュースする新世代のマルチプレイヤー・Vaundy。今作「怪獣の花唄」は今年の5月にリリースされた1stアルバム『strobo』に収録されているのだが、これがコール&レスポンスを誘う疾走感に満ち溢れた王道のポップナンバーで本当に心地良い。僕は正直な所このVaundyというミュージシャンに僕は完全な偏見を抱いていた。彼の代表曲である「東京フラッシュ」を聴いた時にあの手のメロウなシティポップに嫌気が差してしまいそれから疎遠にしていたのだ。だがそんなイメージを堂々と一新する「怪獣の花唄」で見せた振り幅にノックアウトさせられた。来年以降は更にポップスシーンを語る上で看過できない存在になっていくに違いない。
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6位  モノマネ / クリープハイプ 
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モノマネ
2020-10-09


クリープハイプが主題歌と劇伴音楽を担当した劇場アニメ『どうにかなる日々』のオリジナルサウンドトラックアルバムに収録された「モノマネ」だが過去に発表されたクリープハイプの楽曲「ボーイズENDガールズ」の続編としての側面も持ち合わせている。抜き差しならない恋愛の倦怠感やリアルなカップルの生活感を切り抜く事に於いて尾崎世界観は名手だと思っているが、今作でもシャンプーやキーホルダーなどのフレーズが意図的に組み込まれ「ボーイズENDガールズ」のカップルが破局した後の姿が描かれている。今作と「ボーイズENDガールズ」を比較すると凡ゆる面で似てる所と全く似てない所がある。モノマネになれていないその部分こそが今作の旨味なのかもしれない。

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5位  夏のせい / RADWIMPS
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夏のせい ep (通常盤)
RADWIMPS
2020-09-02







RADWIMPSにとってメジャーデビューから15年という1つの節目であった2020年。当初はワールドツアーと国内のドームを含むツアーなど大規模なライブツアーを開催する筈がコロナウィルスの影響で延期/中止を余儀なくされた。そんなコロナ禍だからこそ野田洋次郎の音楽製作は拍車をかけ、彼等は5ヶ月連続で新曲を発表し、9月にはその集大成とも呼ぶべき『夏のせい ep』をリリース。表題曲の「夏のせい」は夏が本来持っている解放感を歌いたかったという野田の想いが壮大なストリングスから充溢し、僕らが共通意識としてある夏景色と高揚感が想起させられる楽曲だ。実は今作は昨年にレコーディングされておりコロナ禍と直接的な関連性はない。だが敢えてコロナ以前に製作された「夏のせい」が届けられたのはコロナによって奪われた日常が戻ってくる未来を彼等が願い続けているからだろう。
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4位  サイダー / 原田珠々華
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2018年からソロ活動を始めた元・アイドルネッサンスの原田珠々華の新曲「サイダー」は瑞々しい夏景色が彼女らしい視点で切り取られた爽やかなサマーチューンである。今作は彼女が影響を受けたミュージシャンとして公言している神聖かまってちゃんの楽曲「秋空サイダー feat.たかはしほのか」にインスパイアされて制作された。そんな原田珠々華だがアイドル時代は炭酸飲料が嫌いでオロナミンCを険しい表情で飲んでいた記憶がある。実際のところ「サイダー」の製作時も炭酸飲料は苦手だったようだ。幼少期の炭酸飲料って何処か憧れの存在でオトナの飲み物だった。サイダーを飲み込んだ時に喉に走る甘さと苦さのように、人生も甘さと苦さを重ねるもの。《甘さ苦さ重ね大人になるんだ きっと》「サイダー」の中で弱冠18才の彼女は子供から大人へ移り変わろうとしている。

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3位  あっけない / 坂口有望
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shiny land (通常盤) (特典なし)
坂口 有望
2020-02-19


今年2月にリリースされた坂口有望の2ndアルバム『shiny land』に収録された「あっけない」は彼女の友人が恋人と別れた翌日に「あー、恋愛ってあっけないなあ」と呟いたことが忘れられずに製作された楽曲であり恋愛の呆気なさを歌っている。《2人で落ちた恋を / 今1人で登るだけさ》《わたしを好きでいる魔法にかかったフリをしてくれて》《あいこでお別れしよう 後悔なんてないよ / でもあっけないわ》など数々の失恋ソングを手掛けてきた彼女らしいフレーズがポップな曲調に昇華されていく。アップテンポでありながらシリアスな歌詞、そして恋愛に絡み付く幸福と憂鬱の描写。岡部晴彦などのプロデューサー陣による素晴らしいアレンジもさる事ながら坂口有望というシンガーソングライターのその非凡な才能が凄まじい。

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2位  yumeutsutsu / 赤い公園
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THE PARK (初回生産限定盤) (特典なし)忘れもしない今年の10月下旬。ロックバンド・赤い公園のギタリストでありコンポーザーの津野米咲が死去したというニュースが飛び込んできた。僕はそのネット記事を読み漁りながら酷く困惑し、愕然とした。現実を呑み込むのは容易ではなかった。何故なら今年の4月に新体制となった赤い公園がリリースした初のフルアルバム『THE PARK』はこのバンドの無尽蔵なエネルギーと屈強なプライドを存分に感じさせる作品だったからである。殊にアルバムのラストを飾る「yumeutsutsu」のダイナミズムは凄まじかった。《行こうぜ うつくしい圧巻の近未来 絶景の新世界》この曲でラストで歌われたこのフレーズは紛れもなく津野米咲の覚悟であったはずだ。津野米咲が不在となった赤い公園だが今後も活動を継続するという。津野米咲が果たせなかった夢と見れなかった絶景の新世界を残された赤い公園のメンバー達が顕現させてくれる事を願っている。
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1位  Brand new planet / Mr.Children

今年の12月にリリースされたMr.Childrenの20枚目のオリジナルアルバム『SOUNDTRACKS』に収録された「Brand new planet」だが今年の…というよりも2006年以降に発表された彼等の楽曲の中では断トツで好きな曲になってしまった。殊にこの曲はアルバムエンジニアにスティーヴ・フィッツモーリスを迎え、アルバム全編が海外でレコーディングされたという豪華な音響を象徴する楽曲だと思う。壮麗なストリングスと洗練されたバンドサウンド、衰えを感じさせない桜井和寿の伸びやかな歌声といった凡ゆる要素がこの楽曲に内在する高揚感に結びついている。この曲について桜井は自分をモチーフにしていないと語っていたが《新しい『欲しい』まで もうすぐ》と歌いながら《さようならを告げる歌 この世に捧げながら / 絡みつく憂鬱にキスをしよう》と歌う辺り。愛くるしい程に桜井和寿である。
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