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 RADWIMPSが4月5日に新曲「鋼の羽根」を配信リリースした。大塚製菓のバランス栄養食「カロリーメイト」の新CMの為に書き下ろされた「鋼の羽根」は“この世界で、考えつづける人へ”という新CMが標榜するメッセージに強く共感した野田洋次郎 (Vo.&Gt.) が“ここから少しでも光に向かっていけるような作品”を目指し制作した楽曲だ。こうして生まれた「鋼の羽根」はシンフォニックなサウンドの上で美妙なメロディが高揚感を誘うミディアム・バラードに仕上がっている。今作がコロナ禍によって期せずして我々に課せられた“この時代をどう生き抜くべきか”という命題と向き合ったが故の産物である事は言うまでもないが思えば彼の中でこの命題に対する思索は昨年から続いていた。

 RADWIMPSにとってメジャーデビュー15周年という1つの節目であった2020年。しかし当初予定されていたアメリカ、ヨーロッパ、アジアを回るワールドツアーと国内のドーム&アリーナツアーは猛威を奮うコロナウィルスの影響で延期、中止の選択を余儀なくされた。入念な準備を重ねてきたライブが白紙になった喪失感に加え、コロナ禍で露呈した国家の脆弱さや様々な情報に翻弄される人々の様相は野田洋次郎を絶望の淵に突き落とした。だがその圧倒的に希望の持てない現実に直面したからこそ、彼の視線はアフターコロナの世界へ向けられていき、“僕らの新しい未来をどうしようか”という想いの下で「新世界」や「ココロノナカ」などの楽曲が立て続けに制作された。これらはコロナ前にレコーディングされていた「夏のせい」や「猫じゃらし」と抱き合わせる形で『夏のせい ep』としてコンパイルされ、非常にドキュメント性の強い作品となった。

 その一方で「鋼の羽根」は野田洋次郎の意識が先述した「新世界」に象徴されるアフターコロナではなく、現在のウィズコロナ時代に向けられた事で意義深い作品となったが、このコラムで注目して貰いたいのは「鋼の羽根」という楽曲タイトルである。なぜ“鋼の羽”ではなく“鋼の羽根”というタイトルなのだろうか。一般的な定義として“羽”は鳥類の翼を指し、“羽根”は鳥類の羽から抜け落ちたその1本を指す。つまり幾つもの“羽根”の集合体が“羽”であり、“羽”に対して“羽根”と言うのは実にミクロな存在なのである。
このような“羽根”に対するミクロなイメージは「鋼の羽根」の中で描かれる宇宙にぽつンと咲く“僕”の孤独な姿とオーバーラップする。しかし《揺るぎないものがほしかった / 壊れない意志がほしかった》と繰り返される“僕”の内省的な思考は、“君”という存在に触れたことで鮮やかな反転を見せる。“鋼の羽根”とは《一人だけで生きていける強さ》に代わる、コロナ禍を生きる一人一人が自分で自分の未来を作っていこうとする強い意識そのものだ。そしてその一人一人の意識は同じ時代を生きる“君”という同志と紐帯することで初めて“羽”となり、圧倒的に希望の持てない現実から光に向かって羽ばたく為の主翼になるのである。(やまだ)
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(RADWIMPS「鋼の羽根」Official Music Video)